YUIMETALの献身(1) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日12月8日は、2013年、NHK Worldで、SU-出演のJapan Pop Culture Carnivalが二週連続で紹介された日であり、2016年には、Red Hot Chili Peppers UKツアーのSpecial Guestとして、グラスゴーTHE SSE HYDROに出演した日DEATH。

 

嬉しいお知らせDEATH。

日本文化を紹介する外務省のWEBマガジン「にぽにか」No.21の特集記事「ニッポンのPOP最前線」の「2傾奇者たちA New Style of JAPAN POP Artists」として、BABYMETAL、でんぱ組inc.、和楽器バンドが大々的に取り上げられています。

http://web-japan.org/niponica/index_ja.html

「日本文化には、時折、形式や様式美に真っ向から立ち向かい、誰もが思いもよらぬ斬新さで新しい風を吹き込む人物が現れる」として、歌舞伎の原型を作った出雲阿国を取り上げ、その現代版がこれらのアーティストだというのである。

そのトップに挙げられているBABYMETALの紹介文は、以下の通り。

-引用-

重低音が轟くへヴィメタルの力強いサウンドに、SU-METALの澄んだ歌声、さらにYUIMETAL、MOAMETALを加えた3人の可愛らしくも小悪魔的なダンスパフォーマンスが加わり、唯一無二の世界観を創り出す「BABYMETAL」。

J-POPとへヴィメタルを融合させるコンセプトには、国内外のポップスファンはもとより、へヴィメタルファンをも巻き込み、ジャンルを超えて高く支持されている。様式美を踏襲するライブでは、演者にメタルの神「キツネ様」が降臨。ゆえに決めポーズは指で作るキツネサインだ。

-引用終わり-

日本国政府外務省の広報誌ですぜ、旦那。

 

さて、YUIMETALの病状だが、公式発表はまだないが、ついこの間の10月14-15日まで元気な姿であり、病欠のアナウンスも広島入りした後だったので、おそらく突発的なものであり、季節柄、インフルエンザの可能性が最も高いと思われる。

確かにLegend-S-の週、都内では月曜日から急激に気温が下がり、「都内のインフルエンザ定点医療機関からの第47週(11月20日から11月26日)の患者報告数が、流行開始の目安を超えた」として、11月30日付で、東京都から「都内でインフルエンザ流行の開始」が宣言されていた。

今年の特徴は、2009年に“新型インフルエンザ”として流行したウィルス「AH1pdm09」の比率が高く、A香港型とB型がほとんどを占めていた去年とは全然違う。これが「Legend-S-」直前になって急に流行し始めたのである。

特に神奈川方面から渋谷へ行く東急東横線・田園都市線が通る世田谷区の罹患者数は、都内平均の10倍近くになっている。すでに都内だけで小学校を中心に58校が学級閉鎖されたという。本当にインフルエンザだとすれば、予防しきれなかったのはYUIちゃんのせいじゃない。(キッパリ)

どなたにも経験があると思うが、インフルエンザの症状はキツイ。

まず、高熱。今でも覚えているが、中学校3年生の冬、授業中なんか顔が熱いなあと思っていたら、先生が「おい。おまえ、顔がヘンだぞ」と言われ、クラスメイトから爆笑を食らったとたん、膝ががくがくして、ものすごく寒い。そのまま家に帰り、体温を測ってみると40℃を超えていた。布団に寝ていると、冗談ではなく、天井が渦状になってぐるぐる回っていた。気持ち悪くなって何度も吐いた。寒気と関節痛。水を飲み込むのも痛い。熱が収まると咳が止まらなくなった。医者へ行ったかどうかは覚えていない。生来の医者嫌いなので、行かなかったような気がする。家には車もなかったし。でもタクシーか何かで無理やり連れて行かれたのかなあ。

とにかく数日間、ずっと家に居て、福永武彦の病弱な少年のカタカナ独白体の小説を、「ぼくと同じ境遇だなあ」と思って、読みにくいのをこらえて読んでいたことを覚えている。

今となっては「ラッキー」と思うが、味覚や食欲というものがなくなり、ずいぶん痩せた。その直後に卒業アルバムの写真撮影があったので、ぼくの中学校の卒業アルバムには、ちょっとやつれた美少年の姿で残っている。なんちて。

本当にインフルエンザなら、10日ほど安静にしていれば治る。老人で体力がなかったり、不潔な環境だったりすると、咳が高じて気管支炎や肺炎になることがあるが、若くて体力のあるYUIならば、そんなことはないだろう。おそらくクリスマスの頃には、公式ツイッターで、元気になった笑顔を見せてくれるはずだ。

落ちた筋力は、治ってから徐々に戻していけばいい。熱は抗体ができる反応なので、この冬は、同じ型のインフルエンザウィルスにはかからない。

 

広島では、YUIの不在をSU-とMOAの頑張りで見事にカバーし、大感動のライブにしてくれたが、やはり、「完全体」としてのBABYMETALを見たかったという声も多かった。

特にMOAが今回のことで一歩前へ出たような気がするので、YUIにも復帰戦以降、大きな期待がかかる。

SU-METALが、鋼のような歌声で聴衆を魅了するBABYMETALのフロントマンだとすると、MOAとYUIはKawaii担当で、KOBAMETALに「SU-の周りで踊る天使」として採用されたのは事実だし、「双子」として一括りにされることが多い。

だが、ぼくの見るところ、MOAMETALとYUIMETALは、まったく個性が異なる。

「♪私たち似た者同士だなんて一緒くたにしたがるけど、それぞれアンテナ立ててちっちゃなハート磨いてる」(「Friends」)のである。

MOAMETALは、何度も書いているように、人の心を読んで気配りができる性格で、口達者なようでいて、礼儀正しく、場をわきまえる非常に繊細な子だと思う。

それに比べてYUIMETALは、おっとりしているように見えて、実は物事にこだわらず、良くも悪くも本能的・動物的に動く“未完の大器”だと思うのだ。

そういうYUIの言動をいくつか取り上げ、これまで彼女がいかにBABYMETALの成長に貢献してきたかを検証してみたいと思う。

 

●検証1

「ダンゴムシはね、幼稚園の頃は触ってたけどね、ママがトイレのところを通った虫って言ったからね、なんか怖い」

アミューズキッズに入って間もない2009年、トヨタ提供のネット配信番組「新しい子ども番組」に、杉崎寧々、飯田来麗らとともに出演。この番組は後にさくら学院“校長”となる倉本美津留がプロデューサーとなって、子どもたちを街に連れ出し、ドキュメンタリータッチで子どもの発想やひらめきを引き出そうという企画だった。

http://soket.jp/work/atarashii-kodomobangumi/

まだ小学校4年生だったYUIは、ペアを組んだキッズタレントと街を歩いている途中、ダンゴムシを発見。相方の女の子は子どもらしく平気でダンゴムシを触わるが、YUIは触われない。他の子に交じってトークするシーンでも、声の大きい子に発言権を奪われてしまい、悔しそうな表情を見せる。街の探検結果を発表する回では、自分が提案したネタを、同じネタをやりたがった飯田来麗に取られてしまう。

あれが世界的スターとなったYUIMETALの幼い姿だ、と知って見るからかもしれないが、YUIの可愛さは際立っている。

「私が、私が…」ではないところ。「…ね、…ね」という話し方なのに、気品がある感じ。

他の子が強く出るとちょっと身を引いちゃうところが、親心をたまらなくくすぐる。

そう、この頃から、人を強く惹きつけるスター性を持っていたのだ。

水野由結という超カワイくて、ちょっと引っ込み思案で、品のある小さなキッズタレントがYUIMETALというメタルネームを戴き、激しいメタル楽曲を歌い踊るからこそ、BABYMETALというプロジェクトが「なんじゃこりゃ!?」となったのである。

 

●検証2

「生まれ変わったら、人魚か妖精になりたいです」

TIF2010の転入式と、その後のさくら学院ライブでの言葉。このとき、YUIは天然ウェーブの髪の毛をなびかせ、体の割に長い両手をひらひらと手振りをつけながら話した。童話かファンタジーの世界である。

一方のMOAは、「スーパーMOAちゃんになりたいです」

という「きらりん☆れぼるーしょん」のアイドル根性物語を意識した言葉を発した。

話し方も、ファンに向かって「ウフフフ…」と誘い笑いし、えくぼが目立つ細い頬に、大きな目をくりくりさせながら、物おじしない「早熟の天才」感があった。

同じ最年少の小等部5年生という立場ながら、そのキャラクターは全く違っていた。

さくら学院は、元可憐Girl’sの武藤彩未と中元すず香、売れっ子キッズモデル三吉彩花、「ニコラ」モデルオーディションのGPを獲得したばかりの大型新人松井愛莉、Mini Patti で食育キャンペーンガールの飯田来麗、堀内まり菜、杉崎寧々、演技力に定評のある子役佐藤日向など、アミューズキッズのスーパーグループとして結成された。菊地最愛も、ちゃおガール準GPというタイトルを引っ提げての加入である。

その中にあって、水野由結は「キッズスタイル」(オリコン)の読者モデルに過ぎず、雑誌の廃刊後にアミューズキッズにスカウトされただけである。だが、スカウトの目は確かだった。おっとりした感じとは裏腹に、水野由結の演技力は抜群で、「プリキュアインナー」CMやドラマ「MW」(日テレ、2009年6月)、「記憶の海」(TBS、2010年3月)では、難しい役どころをリアルな存在感で演じた。そのまま行けば、子役~女優の道へ進んだかもしれない。

2011年のさくら学院ミニドラマ「水野由結の憂鬱」で主役になったのは伊達ではなかった。つまり、水野由結は、アミューズキッズで開花した天性のオーラを放つ女優だったのだ。

 

●検証2

「あの…目線はカメラの方でいいですか」「うん。」「ありがとうございます」「うう…優勝!」

月刊MELODIX「アイドル下剋上」での、MC山里亮太との会話。

「胸キュンセリフ対決」というコーナー。

さくら学院代表となったYUIが、「急に雨が降ってきて男の子に傘を差しだされて一言」というシチュエーションアドリブに入る前に、目線を確認するために山里に質問。あの妖精のような手振り付きで山里を見つめ、確認後、感謝の言葉を述べた瞬間、山里は、そのあまりの可愛さにがまんできなくなって、「うう…優勝!」と叫ぶ。

YUIが選ばれたのは、前述したように、その演技力ゆえだろう。

いわゆる「ロリコン」と呼ばれる現象は、幼い少女が持つ小悪魔的な魅力や言動に、中年男性が振り回されるということだろう。タワレコの嶺脇社長が菊地最愛に惚れ込んだのは、バトン部Twinkle Starsのダンスで、彼女がセンター最後方からピョコンと顔を出して手を振る瞬間だった。実際の性格はともかく、彼女が発するピュアでありながら小悪魔的なオーラを感じたからではないか。

だが、YUIにそれは当てはまらない。あまりのイノセント、あまりのピュアさに、聖なるものに触れたように心を射抜かれてしまうのだ。だから、山里が「この収録終わったあたりで、仏門に入っちゃおうかなあ」と冗談にもせよ慨嘆したのはよくわかる。

そして、父兄さんの中に、水野由結は天使と等価だから、「ゆいちゃんマジ天使」という言葉の「天使」を「ゆいちゃん」に置き換え、ゆいちゃんマジゆいちゃん=YMYという言葉が生まれた。

そんな水野由結がYUIMETALとして、早熟の天才菊地最愛がMOAMETALとして、可憐Girl’s以来、信じがたい歌唱力を持つSU-METALを支え、メタル楽曲を歌い踊る。

この「アイドル下剋上」はまた、BABYMETALが初めてテレビで「ド・キ・ド・キ☆モーニング」を1コーラスだけ披露した記念すべき出演となった。だからBABYMETALには圧倒的な集客力が生まれたのである。

 

●検証3

「みなさんは地震大丈夫でしたか?毎日ニュースを見ていると悲しい気持ちになります。でも、由結も自分の出来ることを頑張らなくちゃ!!って思います。電気やガスや水、牛乳、トイレットペーパー…。今まで当たり前にあった物が今回のことですごく大切なんだなって思いました。一人でも多くの人に元気になってもらえるようにさくら学院みんなでこれからも頑張っていきたいと思います。」

2011年2月のさくら学院バレンタインライブで、重音部は初めてBABYMETALと名乗った。その直後の3月11日、東日本大震災が発生。震源地に最も近かった松井愛莉に始まって、全メンバーがさくら学院日誌にコメントを書いた。水野由結の番は、4月4日で、タイトルは「当り前じゃない」。

メンバーが幼いさくら学院は、アイドルユニットとして現地でのチャリティライブをやったわけではない。だが、全員に日誌を書かせ、アイドル活動=お客さんの前で歌って踊るという「仕事」の意味を考えさせた。

中元すず香は、「(復興した後は)この光景がいつか信じられなくなる日が来る」と書き、最年少メンバーだった水野由結、菊地最愛は、「自分の出来ること」=アイドルとして、歌で、踊りで、人々を励ますことを誓った。

だから、というのはうがった見方かもしれないが、さくら学院には、自分がアイドルとして光り輝く、人気者になる、セレブとしてお金持ちになる、ということを自己目的化せず、あくまでも「お金をいただく以上に、ライブに足を運んだお客さんを楽しませ、励ます」ことを第一に考えるMIKIKO師譲りのプロフェッショナリズムが伝統となった。

BABYMETALもまた、過酷な練習やライブスケジュールにも、常に全力でパフォーマンスする気概が揺らぐことはない。

水野由結がこの中で述べている「さくら学院みんなで」という言葉にも大きな意味がある。卒業直前、水野由結は「さくら学院を一番愛しているのは私」という主張を譲らなかった。「さくら学院は世界一の学校」とも言っている。三吉彩花や松井愛莉がさくら学院時代を「黒歴史」(メレンゲの気持ち)と言っているのとは対照的に、水野由結にとって、さくら学院で学んだこと、みんなで歌い踊り、お客さんを励ますという、幼いあの日に表明した、アーティスト人生を貫く「背骨」のようなものをとても大切にしているのだ。

これが、実はBABYMETALの三人を絶対に空中分解させない重要な要素になっている。

おっとりしているようで、水野由結は強い。

(つづく)