Legend S参戦記(3) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日12月4日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。

 

初日に見た原爆ドーム、アフター、2日目の観光については、次回以降書くことにして、まずは2日目のライブの模様を文字実況。

結論から言うと、セトリは昨日と全く同じ。

だが、重要な点で、昨日とは全く異なるライブだった。BABYMETALというユニットの凄みをまざまざと感じた。

ポイントをズバリ言おう。

昨日のライブは、YUIの不在を、SU-とMOA、神バンドの全員が補い、女神降誕のストーリーを全うしようとする意志の強さに涙した。

だが、今日のライブは、そんな生易しいものではなかった。

MOAMETALは一晩で別人のように成長してしまった。体のキレ、目力、立ち上るオーラ。

彼女はもうSU-と拮抗しうるソロアーティストになった。

一方、SU-METALは、20歳を機に、これまで自らに禁じていた歌唱上の技巧の封印を解いた。つまり、ビブラートを意識的に使った。それも今夜のセトリ中で劇的に変化をつけてみせた。女王の貫録と風格。底知れぬ凄み。剛速球投手が、フォークを試合で初めて使ったような印象。

このライブは、新曲の発表もなし、次年度のスケジュール発表もなし、SU-の幼い頃を振り返るLegend “1997“のようなドラマも無し。

ひたすらSU-の、ネイティブとそん色ない英語での「絶望と希望の弁証法=待望の女神降誕」という新興宗教じみたBABYMETAL神話を語る、懐かしの「メタル少女歌劇団」によるミュージカルのようなライブだった。

だが、YUIの欠席という緊急事態のこの2日間、ややもすると失笑されかねない「物語」の、その本質の奥深いところで劇的な変化が生まれた。ぼくらメイトは、「女神誕生」というフィクションではなく、本当のSU-METALというアーティストと、MOAMETALというアーティストの成長を、目の当たりにすることになったのである。

そう、それはまるで、日本武道館でYUIが落下し、戻って来たYUIを見たSU-とMOAのアイコンタクトを見たとき、その場に居合わせた全員が、BABYMETALというユニットの絆と意志の強さをまざまざと感じたように。

 

開場は昨日より2時間早い15:30のはずだった。昨日はシート席の着座が遅かったので、それを30分早めるというアナウンスもあった。だが実際に列が動き始めたのは、16:00を過ぎてからだった。ここよりはるかに大きいSSAや大阪城ホールで、スタッフはきわめて手際のよかったはずだが、今回はどうしたのだろう。どうもゲネプロや最終チェックに時間がかかっているようだ。特効、パイロが多いからか。

16:15。ようやくシート席に並んだ列が動き出す。

2日目のぼくの席は、C14列44番という、ほぼ正面、ということは最もステージから遠いエリアの2階席2段目最前列。巨大な狐の口のすぐ右横で、会場全体を見渡せる位置である。

ステージセットは昨日と全く同じ。

17:00。定刻なので、会場から拍手と口笛が鳴る。だがまだ入場が続いている。ステージ上では青山神やギター、ベースの担当者が音出し。

17:15。BGMに「ペインキラー」がかかり、それに場内での注意アナウンスが被る。これは開演が地階合図。ところがそれでも始まらない。海外メイトさんがじれて「BABYMETALチャッチャッチャチャチャ」という手拍子を始める。

17:25。突然客電が落ちる。大歓声。

「メシアの光」という紙芝居が始まる。昨日と全く同じ。SU-の発音はもやはネイティブである。「天からの授かりものとしての“光”を受けたこの星の人々は、やがて希望を失い、絶望に陥った。だが、20XX年。この世界に希望でも、絶望でもない新たな光が差し込み、“あの聖地”に新たな女神が降誕して、NEW ERA(新時代)が到来する…。」

その瞬間、ぼくの横にある巨大な狐像が青く光り、口が大きく開いて、その中から、THE ONEの銀色に輝くコスチュームをまとったSU-が現れ、右手にあった杖を引き抜き、一歩一歩降りてくる。バックに流れるのは、ハリウッド映画じみたラテン語のコーラス。そして6体の狐男が、6体の子狐に囲まれた円形舞台の鎖を引きながら、正面ステージに近づけていく。ここまでは昨日と同じだった。

しかし、円形舞台は、中央通路の中ほどで、信じられないほどの高さに上がる。

SU-が杖を振った瞬間、観客のマスクが赤く光った。これは昨日はなかった。

そしてその位置で、6体の狐像からも赤いレーザーが放射され、SU-が杖を振る方向に、ステージ正面から閃光が走る。昨日よりドラマチック、かつ壮大な演出である。

円形舞台が下がり、ステージに連結されると、狐男たちは、階段の中断に上り、ここから熱狂的な「ドンドコドンドン、ドン、ンドンドン」という和太鼓のようなリズムを奏でる。神バンドも加わり、藤岡神と大村神は、時折「ギュイーン」というハーモニクス音で、荒々しさ、神秘を表現する。その太鼓が「ドン!」と止まった瞬間。

1.イジメ、ダメ、ゼッタイ

のイントロが始まる。

SU-の「あー」で、下手にいたMOAがステージ上を走る。ピットは下手、上手それぞれ、前、中、後ろと、合計6ブロックあるが、このうち後方の2つでは、ここでもうサークルモッシュが始まった。

異変に気づいたのは1番が終わった後の、MOAの擬闘である。

とにかく振りの大きさ、気合に満ちた表情、ジャンプの高さ、どれをとっても、昨日より1段ギアが上がっている感じなのだ。昨日はエアYUIを想定しながら、いつも通りの振りをやっていた感じ。今日は、YUIを相手にしているというより、一人で、見えない誰かに抗うような、闘いそのものを表現する舞踏劇になっていたのだ。

この時点では、まだぼくの見る位置が変わっただけなのかなあ、という気がしていた。だが、次の

2.ギミチョコ

が始まると、疑念は確信に変わった。「あたたたたーたたーたたたズッキュン」のあと、いないYUIの「わたたたたーたたーたたたドッキュン」のパートがSEで入らない。その分を観客が歌っているが、MOAはいつものとろけるようなニコニコ顔ではない。

YUIとMOAの二人でSU-のちょっとおバカでカワイイ妹分を演じれば、合わせ技で、一人の女の子(SU-)の、無邪気でカワイイ内面的葛藤の人格化が表現できる。だが、今日のMOAは、YUIのいない分、ひとりでその「意味」を伝えるために、ニコニコ顔ではなく、アルカイックな微笑みで、内面的葛藤の人格化のような役割を演じているのだ。

ギターソロ。両ギターの“アウト”なアドリブが冴えわたる。ワーミーによるキュイーンという高音に加え、ピッキングハーモニクス、フレットハーモニクス&アームアップをがんがん入れてくる。それは、狐火のように、この曲の持つ本来の危険さ、戦慄感を表現する。

SU-の煽りは、「ハーイ、広島×××(聞き取れず)」。

これも昨日より強い口調。手拍子を促しつつ、移動する円形舞台上を二人が駆け回る。

そしてソロ終わりのあの頭指さし変てこダンスも、MOAの体のキレが異様なほどだ。

そう、なんとなく「張り合っている」感が見て取れるのだ。

続く、

3.ドキドキ☆モーニング

でも、MOAの躍動感が凄かった。

例えば、「♪パーティタイム」のときのスカートの裾を上げて、片足をちょんとやる振り。いままで目立たなかったこの振りが、異様にカワイイ。それから「♪リンリンリン」のときの表情。もともとMOAの表情は豊かだが、今日は観客の目を見て微笑みかけるというより、顔の表情も体の一部として表現している感じ。円形舞台上、YUIのスペースは空いているのだが、中心点がSU-ではなく、歌うSU-と踊るMOAの間にある感じ。とにかくMOAMETALというアーティストの存在感が凄かった。

暗転後、ピアノのアルペジオが流れ、会場を青い光が包む。

4.紅月-アカツキ-

である。

(つづく)