紅白歌合戦に思う(3) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日11月23日は、2013年、メタリカの映画「スルー・ザ・ネヴァー」トークイベント@109シネマズ木場に出演した日DEATH。

 

BABYMETALを消費するとはどういうことか。

山田酒造の「最愛」を購入するとはどういうことか。

ぼくらは、お安くはない代金を払ってデカいTシャツやら、フードタオルやらを購入し、そこに記載された番号を、THE ONEという仮想空間のファンサイトのフォームに入力して、自分のメタルネームを登録し、顔写真ファイルを送信する。

すると、ときどき「召喚状」なるメールが配信されてきて、グッズが出たから買え、どこどこでライブがあるから申し込めと命じられる。ライブは申し込んでも落選することが多く、当選したら有頂天になる。

そして、ライブ当日には、会社や学校を休んで朝から会場前に並び、外国人を含む見知らぬメイトさんと友達になる。もう何枚になるか数えることもできないほどのTシャツやグッズを買い、数時間立ちっぱなしのライブで喉と腰と膝を悪くする。

これのどこが「Re-Creation」=労働力の再生産なのか。

山田酒造の「最愛」を購入する場合は、もう少し簡単だ。

ネット上で検索し、似たような名前の造り酒屋の中から、間違えずに愛知県海部郡蟹江町の山田酒造のホームページ

http://www5d.biglobe.ne.jp/~yamada/kaisyaannaip.htm

へ行き、「商品情報」のページのボタンをクリックして、

品名、数量、配送先住所、配送先の名前、注文者の名前、電話番号、メールアドレスを記入してメールで代引き注文すればよい。

そうして、2-3日で届いた六割精米特別純米酒「最愛」を、「ふむふむ。これが最愛かー、うまいうまい」と飲めばいいだけである。

これのどこが社会とのコミュニケーションなのか。

いやいや、これこそマルクスやハーバーマスが気づかなかった「消費」というコミュニケーションなのである。

何もTHE ONEに入ることと、清酒「最愛」を買うことだけがコミュニケーションだと言っているわけではない。

「二本柱の会」に入ったって、「ANGEL EYES」に入ったって、「獺祭」を買ったって、「栄光富士」を買ったって、「消費」というコミュニケーションをしていることになるのだ。

THE ONEに入り、BABYMETALのCDやDVDを買い、ライブに行く人が増えれば、SU-やYUIやMOAやKOBAや大里会長が喜ぶだけではない。その成功を見て、「ラウド系アイドル」やGirls Metalバンドが増える。それらのファンが総体として増え、従来型の「アイドル」の人気が頭打ちになれば、それは日本の音楽史上のエポックとなる。

同じことは、毎日ぼくらがスーパーで買う商品にも言えるだろう。甘ったるい日本酒が流行らなくなれば、ドライな辛口の日本酒や、発泡日本酒が生まれる。お酒くらいはスーパーで売っているありきたりのものではなく、ネットで「お取り寄せ」する-ベビメタファンなら山田酒造の「最愛」か、栄光富士特別純米「ゆい」金箔入り。芋焼酎「すず香」は八王子の料亭のオリジナルブランドなので行かないと買えないから、一ノ蔵の発泡清酒「すず音」-といった行動に出ることも、ありだろう。

こうして、ロードサイドの大規模ショッピングモールや、深夜までやっている駅前スーパーマーケット、いたるところにあるコンビニといったリアルな店舗の業態が全国を均一化する一方、地方や小規模な店舗でもネットで注文-宅配できるという、さらなる多種多様な商品選びが可能な消費形態が発達していく。ぼくらはベビメタ酒を購入することで、市場の変化に関与しているのである。

そしてぼくらは、消費者であると同時に労働者、生産者でもある。

BABYMETALのライブに足を運び、クタクタになったとしても、心は爽快になる。そして次のライブに備えて、「よし、明日から仕事頑張ろう」と決意を固める。

あまりのベビメタロスや仕事のストレスに心がくじけそうになったときには「KARATE」を聴いて、「♪セイヤソイヤ戦うんだ」と自分を鼓舞する。

他の日本酒ではなく、清酒「最愛」に身を委ねて酔っ払うとき、「ベビメタファンでよかった!」と心から思えるだろう。

BABYMETALを「消費」することで、ちゃんと労働力としての自分を再生産しているのだ。

なぜマルクスやハーバーマスは、こういう「消費」のあり方を想定しなかったのか。

それはこれほどまでに、ほぼ同じ使用価値をもった多様な商品があふれ、「選べる」社会は、戦後の日本や欧米のような高度な資本主義社会しかないからである。

ソ連時代、ウォッカの銘柄は2種類しかなかった。強いのと、もっと強いのである。(これは有名なジョーク)

北朝鮮には国営放送しかなく、歌手は全員国家公務員である。

それは、理想の社会を企図したはずの社会主義が想定した「酒」や「歌」や、あらゆる商品には「使用価値」しかなく、「付加価値」なんてものは、値段を釣り上げるための資本家階級による搾取のツール=悪だと考えられていたからである。

しかし、国家統制をやめ、生産者による自由競争を取り入れれば、価格や量や品質といった使用価値と、デザインやブランドといった付加価値とが混然となり、多様な商品が開発されるようになる。

そこで淘汰されていくのは、売れないもの=人気のないもの=消費者が選ばないものである。そしてその厳しい淘汰を勝ち抜くために、生産者、労働者は、創意工夫して改良を行い、品質や付加価値が向上した新たな商品が生まれる。その繰り返しで日本の経済は成長してきた。「カイゼン」は日本の生産業の特質を端的に表す国際語である。

BABYMETALという商品も、音楽性や歌詞やカワイさという使用価値と、SU-、YUI、MOAの成長物語やキツネ様のギミックといった付加価値が混然一体となってできている。

山田酒造の清酒「最愛」という商品も、精米割合60%、木曽三川伏流水使用の特別純米酒という使用価値と、菊地最愛の出身県と名前の一致という「奇跡」の付加価値が混然一体となってできている。

その価値を何物にも代えがたく尊いと思い、選び続けることで、BABYMETALも清酒「最愛」も淘汰に勝ち残るし、その成功に学ぶ他の市場プレイヤーも出てくる。

そうして歴史は動く。

もちろん、選挙権といっても、たった一票(選挙区と比例区)の価値しかないように、ぼくらの消費行動も微々たるものだ。それでも、それを放棄せずに日々選び続けることで、ぼくらは、ちゃんと歴史を作っているのだ。

結論としては、今年も紅白歌合戦、残念だったねと。

政治に関しては、「偏向報道」と指弾されるテレビ局でも、BABYMETALを排除していることなんて、基本的にはないと信じたいし、マスメディアに携わる方々の「公共性」の志も信じたいと思う。

だから、BABYMETALを応援し続けることは、BABYMETALの「次」を選ぶ意思表示、意見表明になりうるのだということを確認したい。

We are THE ONE, We are BABYMETALなのである。

(この項終わり)