知恵の書(1) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日11月15日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントはありませんでしたが、今から40年前の1977年、当時13歳の横田めぐみさんが学校帰りに、北朝鮮の工作員に拉致された日DEATH。

 

11月12日(現地時間)、BABYMETALは、MTV Europe Music Award 2017 の「Best Worldwide Act」に輝きました。

Lil’ Kleine(オランダ)、C.Tangana(スペイン)、BABYMETAL(日本)、ALMA(フィンランド)、DaVid(ナイジェリア)、Stormzy(UK)、Lali(アルゼンチン)の各国代表競合7アーティストの中から選ばれたとのこと。

いまいちピンとこないが、MTV EMAは何度もノミネートされながら受賞していなかったので、よろぱ人にとって、日本のBABYMETALが一番Worldwideな存在だという認定タイトルなので、何はともあれ、とりあえずめでたい。

先日、アメリカのネット音楽誌Loudwireでも選ばれているから、海外の音楽賞の受賞歴-Countless Legend-は積み重なっているわけだが、日本では一向に報道されない。やっぱり日本のTV業界や音楽業界では、あまりに突出したベビメタは「なかったこと」にしたいのかなあ。

 

12月2日-3日に行われるLegend “S” では、「洗礼の儀」が行われる。

日本武道館「召喚の儀」と同じく、初日はライブだけで、セレモニーは最終日に行われる公算が高い。あるいは、初日はTHE ONE限定なので、「三種の神器」を着用したメイトの中で、“Apocrypha”としてなんらかの「秘儀」が明らかにされ、それを受けて翌日の「洗礼の儀」になるというストーリーなのかもしれない。メイトとしては、ワクワクして待つより仕方がない。

このようにBABYMETALというプロジェクトには、疑似宗教的なギミックが付属しており、生身の三人の少女たちの成長に神秘性を付与している。

ぼくの考えでは、キツネ様を教祖とするその疑似宗教は、既存宗教の継ぎはぎで出来ている。

ビートルズやサンタナが一時傾倒したヒンズー教や仏教の要素は少ない。同じキリスト教でも、近代的で内面重視のプロテスタント諸派でもない。

洋風でありながら、古めかしく、様式的・神秘的な儀礼の多いキリスト教ローマカトリック-ギリシア正教会、グノーシス主義やカバラなどオカルト的な解釈を施したユダヤ教のミックスに、今回、日本神話が加わった。

そこで、「洗礼の儀」を前に、ぼくの知っている範囲で、「BABYMETAL神話」に用いられている名称や概念を解説してみたい。

 

1.十字架と復活

日本では、知ってる人は知ってるが、知らない人は全然知らなくても困らないのが、キリスト教の歴史である。ニュース解説番組で、ユダヤ教とキリスト教とイスラム教が同じ神を崇めていると解説者が言うと、おバカを装った芸能人が未だに「へェー」と驚く。

キリスト教は、紀元前4年ごろに、ローマ帝国の属国だったユダヤで生まれたイエス・キリストが、当時のユダヤ教の改革運動として創始したものである。

そのため、キリスト教の「聖書」は二部構成になっており、ユダヤ教の「律法書」の部分を「旧約聖書」、イエスの言動と弟子たちの宣教の様子を記した部分を「新約聖書」という。

カトリックのミサの前半では、信徒が読む「第一朗読」が旧約聖書から、「第二朗読」が新約聖書の「使徒行伝」か「〇〇への手紙」、司祭が読む「福音」=新約聖書のイエスの言葉の3カ所が朗読される。

イエスは丘の上や街中でも説法したが、ユダヤ教の会堂=シナゴーグで説教することもあり、当時のユダヤ教の教師たち(ファリサイ派、サドカイ派など)と問答合戦になることもあった。「新約聖書」に描かれている限り、ことごとく論破しているので、世界初の“論破王”がイエス・キリストである。

イエスが逮捕され、十字架にかけられたのは、イエスに民衆の人気を持っていかれたユダヤ教保守派の重鎮が、ローマ軍の総督ピラトに「イエスはローマ軍進駐体制転覆を狙っている」とチクり、弟子のイスカリオテのユダが裏切って居場所を密告したからだ。

イエスが処刑された13日の金曜日から数えて3日目の朝、イエスの遺体は忽然と墓場から消え、弟子たちの前に何度か姿を現した。

イエスは、復活を信じない弟子のトマスに、手のひらと脇腹の傷を見せ、「見たから信じたのか?見ないでも信じる人になりなさい」と言い、弟子たちの頭として、最も純朴な性格だった元漁師のペトロに教団を任せ、自分のあとには神のもう一つのペルソナである「聖霊」が来て、あなたたちを「世の終わりまで」見守ると告げて、昇天した。

その後、かつてイエスを迫害するユダヤ教ファリサイ派の急先鋒だったパウロが、ダマスカスの砂漠で死んだはずのイエスと出会って失明するという事件が起こる。彼は回心し、イエスは神だったと宣言、ペトロの教団に加わる。ローマ市民権をもっていたパウロは小アジア(現トルコ)のユダヤ人コミュニティや、ローマ帝国本土へ宣教の旅をする。キリスト教徒は当初ローマ皇帝に迫害され、リーダーだったペトロは逆さ磔にされたが、次第に信者を増やし、4世紀前半コンスタンティヌス帝の時代に公認宗教となった。

ローマ教皇の住まいであるローマ司教座は、ローマのバチカンの丘で殉教した初代ペトロの墓の上に建てられ、その名前を冠してサン・ピエトロ大聖堂と呼ばれる。

これが、「聖書」新共同訳の「福音書」と「使徒行伝」に書いてある、イエスの言行録=新約聖書のあらましである。イエスの母マリアの処女懐胎とか、ガダラという村で豚に悪霊を乗り移らせて退治したとか、盲人を癒したとか、処刑後3日目の復活とか、不思議な話が満載だが、実際に読んでみると、やけに生々しく、弟子たちとの短い交流の記録は、作り話とは思えない。しかも、少なくとも4人の書記者(マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネ)によって同じ話が別のアングルから書かれている。

これと、BABYMETAL神話とは、あんまり関係ない。

だが、Legend “D”-“Z”や、Legend“1997”でSU-が十字架にかけられ、そして「復活」するというベビメタ恒例の儀式が、イエスの十字架~復活のパロディであることは疑いようがない。

イエスは、生前から弟子たちによってユダヤ教の伝承にある救世主=キリストだとされていた。

弟子たちのある者(雷と呼ばれるトマス、愛国党のユダ)からは「ローマ軍を追い払って、ユダヤ王国を再興する現世の王になる」と思われていた。だが、イエスの真意は「神の子」として十字架につけられて生贄となり、全人類の罪を贖うことで「神の赦しと愛=福音を伝える」という意味での救世主だったのだというのがクリスチャンの公式見解である。

同じような意味で、BABYMETALも、「AKBを追い払い、グラミー賞をとり、全世界1000万枚のCDを売り上げ、自家用ジェット機で世界中を飛び回り、音楽業界の女王の座に君臨する」という「現世の野望」ではなく、「メタルというジャンルへの愛を伝え、音楽界に活気を取り戻す」といったホンワカしたところが案外真の目的なのかもしれない。

 

2.この世の終わり

「残された時間はあとわずか」

「♪教えて、もし終わりがあるなら…」(「THE ONE」)など、BABYMETALの楽曲には「終末観」がベースにある。

KOBAMETALの好みなのだろうが、もともとユダヤ教-キリスト教-イスラム教という砂漠の3大宗教には、「終末」の時に神が降臨してすべての人類を裁くのだから、人間は神に従って善く生きなければならないという教えがある。

その神の名は、ユダヤ教ではYHVH(発音不可)、キリスト教ではヤハウェもしくはエホバ、イスラム教ではアッラーと異なるが、実は同じ宇宙の創造主「神」のことである。

その神に人間が従うためのガイドが、ユダヤ教ではモーゼの定めた「律法」であり、イスラム教ではマホメットが定めた「コーラン」であり、キリスト教ではちょっと抽象的だが、イエスの説いた「隣人愛」なのである。

終末の時に何が起こるかは、旧約聖書では「エゼキエル書」「ダニエル書」など、新約聖書では「ヨハネの黙示録」に書いてある。

で、神に選ばれた人は天国へ、神に逆らったものは地獄に行くことになっている。

2009年の統計によると、世界の人口約67億人のうち、キリスト教(カトリック、プロテスタント、ギリシア・ロシア正教)が22億5400万人、イスラム教(スンニ派、シーア派)が15億人、ユダヤ教を信じる人は1億5090万人で、合計39億人くらいがこの恐ろしいイメージを持っていることになる。

残りはヒンズー教9億人、無宗教と無神論が合計8億7000万人くらい、中国の伝統的宗教と儒教が3億9300万人くらい、仏教が3億8000万人くらいで、あとはシーク教、バハーイ教、ジャイナ教とかのよくわからない宗教と、新興宗教、土着の精霊信仰。神道は287万人になっている。神社の数、氏子の数からして、もっと多いと思うが。

無神論と無宗教の違いや、道教と中国の伝統宗教の違いもよくわからない。

とにかく、世界の半数以上が恐ろしい神の裁きによる「終末」を信じており、日本人に多い無宗教や神道信者は世界的には少数派なのである。

BABYMETALでは、世界標準のユダヤ・キリスト・イスラム教風に「終末の時」が強調されるが、その時、何が起こるかは、はっきり定義されていない。

2012年~2013年のLegend“IDZ”では、SU-のさくら学院卒業後の「解散」がリアリティを持っていたと思うが、現在は謎のままである。

というか、Wembley Arenaの「紙芝居」では、「Even Death has no power for re-incarnation of BABYMETAL」(輪廻するベビメタにとっては、“死”さえ力を持たない)とか言っている。

魂が生まれ変わり別の人生を送るという「輪廻」の思想は、ヒンズー教・仏教的な考え方であり、死後の個人の魂は、生まれ変わることなく裁きの時を待っていて、裁かれた後も、天国なり地獄なりで生き続けるというユダヤ・キリスト・イスラム教の考え方と整合しない。

BABYMETAL神話はその点、とっても日本的?な折衷疑似宗教なのである。

(つづく)