BABYMETALは電気キツネの夢を見るか(1) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
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★今日のベビメタ

本日11月5日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。

 

1982年公開のハリウッド映画「ブレードランナー」は、ぼくが一番好きな映画で、メイキングとかインタビュー特典映像が入ったディレクターズカットDVDボックス・セットを持っていたはずなのだけど、探してみたら無くなっていた。前の嫁が出ていくときに持ってったに違いない。ぐぬぬ。

「ブレードランナー」に関するうんちく。

 

その1 原作は2つあった

フィリップ・K・ディックの原作は「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」(Do Androids Dream of Electoric Sheep?) なのに、タイトルが「ブレードランナー」になったのは、原作のタイトルが長すぎて、リドリー・スコットの好みに合わなかったため。アンドロイドを狩る賞金稼ぎの孤独な主人公デッカードの仕事を示すタイトルを探していたところ、医師で作家のアラン・ノースという人が1974年に書いた「The Blade Runner」という小説に出会った。

この小説は、人口が増えすぎた近未来のアメリカで、「劣った人間」に断種手術を施すため、不足している医師が各地を飛び回り、メスなどの医療器具を現地に届ける「手術刀の運搬人」=Blade Runnerという職業を描いたものだった。

フィリップ・K・ディックの原作は、核戦争後、人間以外の動物が絶滅し、人口が激減した世界が舞台。本物の動物はレアだから、デッカードは、屋上でペットとして人工の「電気羊」を飼っているというところから始まる。

ところが、映画「ブレードランナー」の舞台となる2019年のロサンゼルスはさまざまな人種が集住する人口密集地として描かれている。これはアラン・ノースの小説世界の影響だと思われる。

 

その2 へヴィメタルの影響

「ブレードランナー」は、ハリウッドのSF映画なのに、派手な兵器による戦闘シーンもなく、ダークな色調、ヴァンゲリスによるアンビエント音楽、人間モドキ殺しという暗いストーリーだったから、当初はヒットしなかった。だが、その映像のアート性や哲学的なテーマが徐々に評価され、名作となった。リドリー・スコット監督は、「エイリアン」でスイス人画家H・R・ギーガーのデザインを取り入れたが、「ブレードランナー」では、1977年に創刊されたSF&ファンタジー雑誌「Heavy Metal」に影響されたといわれている。実際にはリドリー・スコット監督の指示を受けたデザイナー、シド・ミードが美術を担当したが、雑誌「へヴィメタル」は、イメージの源泉になったと思われる。

http://www.heavymetal.com/

同誌は“The Adult Illustrated Fantasy Magazine”というキャッチコピーで、SF、ファンタジー、オカルトなどの小説やエッセイとイラストをふんだんに掲載している。この雑誌がアート、サブカルチャーに与えた影響は限りなく大きい。

ブレードランナーの飛行車、スピナーを思わせる。(1979年12月号)

 

SF的世界と中世騎士物語が融合したファンタジー。(1981年2月号)

 

NWOBHMは、1979年夏、イギリスのディスコ「Bandwagon」で「Heavy Metal Night」が行われ、出演したアイアン・メイデンなどのバンドを雑誌「Sounds」誌で紹介したジェフ・バートン記者の造語である。

「Heavy Metal Night」そのものが、雑誌「Heavy Metal」から来た可能性がある。”へヴィメタル”とはもともと音楽のジャンル名ではなく、ミュージシャンが着ていたスタッズ付き革ジャンから来ているのでもない。

神話、SF、悪魔信仰、ネクロフィリア、中世の騎士道、荒野の女戦士などのファンタジックなイメージに満ちたこの雑誌こそ、へヴィメタルバンドの「設定」や、コスチューム、ギミック、歌詞、ジャケット写真のアイデアの源泉だったと思われる。

ちなみに1984年3月号は浮世絵風イラストが表紙になっており、日本=インベーダーのイメージである。阪神大震災まであと11年、小梅太夫の登場まで21年もあるのになぜか「畜生」「地震」と書いてある。予知?

 

その3 レイチェル=スー

フィリップ・K・ディックの原作の映画化権(正確には交渉権)を持っていたのは、ハンプトン・ファンチャーという元俳優のプロデューサーだった。映画化がなかなか実現しないので、ファンチャーはシナリオも書いた。

原作では、デッカードは口うるさい妻に毎日愚痴をいわれて頭が上がらない設定だったが、映画ではバツイチのデッカードが、レプリカントであるレイチェルと恋に落ち、逃亡するところで終わる。

これが新作の「ブレードランナー2046」のメインテーマになるのであるが、それは後の話。

この”聖なるレイチェル”のイメージは、シナリオを書いたファンチャーの奥さんだったスー・リオンから来ている。

スー・リオンは、スタンリー・キューブリック監督の「LOLITA」(1962年)に15歳で主演した女優。美少女ロリータに惚れた中年男がボロボロになっていくという物語で、“ロリコン”の語源である。

元々スー・リオンは茶色い髪で、1962年に来日して、坂本九とツーショットで「明星」の表紙を飾ったとき、「金髪は染めたもの」と告白している。BABYMETALが2016年、53年ぶりに坂本九以来のビルボード200のトップ40に入った、あの坂本九と、「ブレードランナー」のレイチェルのモデルとなったスー・リオンは共演していたのである。

レイチェル=スー。

まあ、コジツケみたいな縁だが、SU-METALと名前が被っている。

ちなみにDVDボックスを持っていったであろう前の嫁の名前も英語読みにするとレイチェルとなる。ぐぬぬ。

 

てなわけで、休日、「ブレードランナー2046」を観てまいりました。

(つづく)