世界の終わりとBABYMETAL | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日11月4日は、2013年、「Japan Pop Culture Carnival in松戸」に、SU-がソロ活動として出演し、2014年には、BABYMETAL Back to the US/UK Tourニューヨーク公演@ハマースタイン・ボールルームが行われた日DEATH。

 

2003年、スウェーデンの哲学者ニック・ボストロムは、人類以上に高度な文明を持つ何者かが存在するなら、彼らのコンピュータ内で、宇宙と意識を持った住民のいる惑星をシミュレートしたゲームないし観賞用プログラムを開発するだろうと推論し、何を隠そうぼくたち地球人類は、こうして人工的に作られたシミュレーションの一つに住む住人である可能性が高いと考えた。これが「シミュレーション仮説」である。

ぼくたちが日々直面している現実が、実は錯覚ないし夢であり、本当のぼくたち自身は別の場所にいるのだという発想は、2400年前のギリシア哲学者プラトンの「イデア想起説」や、古代中国の思想家、荘子の「胡蝶の夢」にもあり、その歴史は古い。

近いところでは、ハリウッド映画「マトリックス」(1999年)の設定がこれだ。

人類は機械の「発電機」としてカプセルの中で飼育されており、その意識だけが仮想現実=マトリックスのプログラムの中で、普通の生活をしている。主人公のネオは、うらぶれたハッカーとして暮らす「現実」=マトリックスから目覚め、カプセルから抜け出して、生身の体で機械と戦うゲリラに加わり、マトリックスの中に侵入して、スーパーマンのような活躍をする。

ただ、1作目の初めに、ネオが薬を選んで飲むシーンがあり、実は「目覚めた」のではなく、薬によって夢を見たのだとも解釈できる。

ぼくらは映画を見ているのだが、映画の中でどっちが現実でどっちが夢なのかわからないように、ぼくらは映画を見ているという夢を見ているのではないか…。

17世紀フランスの哲学者デカルトは、やはり現実に見たり聞いたりすることが「欺く神」「悪い霊」によって創られたもので、人間は欺かれているのかもしれないという仮定=「方法的懐疑」というやり方で、肉体の与える感覚を排除し、最終的には「疑う」という純化された意識だけが、唯一絶対に実在すると考えた。これをラテン語で表現したのが、有名な「Cogito ergo sum」(コギト エルゴ スム、我思うゆえに我あり)という言葉である。

デカルト以降、意識と感覚、理性と肉体を別のものとして考える「二元論」が西欧思想の基礎となり、そこから自然を対象化してとらえる実証主義が生まれ、あらゆる自然現象に規則性や因果関係を見出すことで、科学や技術が発達していった。

17世紀当時、西洋人の多くがこの宇宙を創ったのは「神」だと考えていたから、科学者が自然現象の中に法則や因果関係を発見することは、「神の御業」を明らかにすることだった。そこに矛盾はなかった。

だが、自然現象の科学的な法則や因果関係が明らかになるにつれ、そこに「神」を見出す必要はなくなっていった。生物は神によって創られたものではなく、化石を追っていけば生物が徐々に進化してきたものだとわかるし、地質年代の実測値は、「神の言葉」である聖書が記す歴史年代とは全然違っていた。宇宙の始まりはビッグバンであり、神が「光あれ」といったからできたものではなかった。

科学技術の発達の果てに、人類はコンピュータとバーチャルリアリティを発明した。

コンピュータゲームは単なるプログラムである。だが、ゲームの中には物理法則が組み込まれ、住人がいて、あたかも意識を持つ人間のようにふるまう。

してみると、宇宙のどこかに、人類以上に「高度に発達した文明」があるなら、現在ぼくたちが創ったゲーム以上に優れた「宇宙全体をシミュレートしたゲーム」を創る可能性は高い。

にもかかわらずぼくたちは、その「高度に発達した文明」を持った宇宙人に遭遇しない。それは、ぼくたちが、彼らが創ったシミュレーションゲーム世界の住人だからではないか…。21世紀の哲学者ボストロムはそこに思い至ったというわけである。

その「高度に発達した文明」の持ち主こそ、人類が「神」と呼んできた者だったのかもしれない。「神の御業」とは、聖書に書いてあることではなく、そのシミュレーション世界を律するプログラム上の物理法則なのかもしれない。

ぼくはコンピュータゲームをまったくやらないのだが、3Dシミュレーションゲームでは、CPUやメモリーの負荷を減らすために、ゲーム中の主人公、すなわちプレイヤーのアバターの視野に入らない部分は、実は何も描画されていない。アバターが見える範囲で遠くのものは単純な物理法則によって描画され、アバターがプレイヤーのコントロールによってアクションを起こすと、その周囲だけが、リアクションとして演算され、描画される。

実は、ぼくらのいる現実世界でも、同じように、物理法則が通用しない奇妙なことが起こる。

一つは光の性質。

この宇宙では光の速度を超えるものは存在しない。

高速で移動するヴィークルを外から見ると時間がゆっくりと進んでいるように見える。仮に光速で移動すると、外では何億年経とうが、ヴィークルの中では時間が止まっている。光の速度が時間の「限界」になっているのだ。

量子の振る舞いはもっと奇妙だ。

量子銃と呼ばれる装置で量子を次々に打ち出し、間に細長いスリット(隙間)の空いた板を通すと波のような性質を示し、粒子が固着した壁の模様は縞状になる。なぜそうなるのかを知るために、一つの量子の動きを観察しようとすると、その量子は波のように動くのではなく、粒子として直線的にスリットを通り抜けるだけである。観察をやめると、また量子は波の性質を示すようになる。

ゲームと同じように、観察者=アバターの視野の存在が、量子の動き方を規定しているのである。これはおかしい。自然は、人間の有無にはかかわりなく、一定の法則で動くのではないのか。

光や時間も、実は「現実」というプログラムのデフォルト値であり、アバターであるぼくらは、光速を超えることができないようにプログラムされているのではないか。

量子を観察する人間はゲーム内のアバターであり、そのアクションによって、「現実」がその都度、演算-描画されているのではないか。

そう考えた方が、これらの不可思議な現象をスッキリ説明できる。

2400年前にプラトンが「この世界はイデア(理想世界)の劣化した模倣に過ぎない」と喝破したとおり、ぼくたちが現実だと思っているものは巧妙に創られたシミュレーションなのかもしれない。

確かに今の世界はちょっとヘンだ。

1989年公開の「バック・トゥ・ザ・フューチャー Part 2」に出てくる敵役ビフのモデルとなった不動産王が、本当にアメリカ大統領になって日本にやってくるし、頭に黒受話器を載せた太っちょの独裁者が、核ミサイルでアメリカをはじめ国際社会を恫喝している。

このまま推移すれば第三次世界大戦に突入してしまうかもしれない。

いつの時点からか、シミュレーション“地球”のシナリオが、子どもっぽい誰かに書き換えられたような気がしてならない。

そんな中、メタルの救世主として降臨したBABYMETALには、偶然とは思えない、いくつもの「リンク」が貼られている。

BABYMETALは、X-Japanが解散した1997年に生まれたSU-、聖飢魔Ⅱが解散した1999年に生まれたYUI、MOAの三人だった。幼い三人はメロイックサインを影絵のキツネと思ったため、BABYMETALの守護神はキツネ様になった。

稲荷神は古くは三狐(みけつの神)と呼ばれ、お稲荷さんは日本で最も多い神社ネットワークだった。SU-が生まれた広島の稲荷神社には原爆に耐えたお守り狐像があり、1971年、その広島に原爆被災者を見舞うチャリティコンサートを行うためにイギリスからレッドツェッペリンがやってきた。SU-METALの成人を祝う「洗礼の儀」は、レッドツェッペリンと同じ広島県立総合体育館グリーンアリーナで行われるが、それが発表された日は、46年前のチャリティコンサートと同じ9月27日だった。

BABYMETALは2014年、レッドツェッペリンの出身地イギリスのSonisphereで事実上の欧米デビューを飾り、2016年には、レッドツェッペリンが解散した1980年に始まったモンスターズ・オブ・ロックを引き継いだレスター州ドニントンパークのHR/HMフェスであるDownloadフェスティバルに豪雨の中、出演した。

そのひと月前、キツネのロゴマークで知られる万年最下位チーム、州都レスターシティFCには、前年末から日本代表の岡崎慎司が加入しており、5000分の1の掛け率を跳ね返して、2015-16シーズン、プレミアリーグで奇跡的に優勝した。

海外進出のきっかけとなった「ギミチョコ‼」には、2016年のUSツアーから戦後の進駐軍を思わせる煽りがついたが、レッチリのツアーに帯同した2017年のUSツアーには、GHQ司令官マッカーサーの出身地リトルロックが含まれていた。

SU-が生まれた1997年に始まったフジロック第1回の海外バンドは、UK、USツアーで前座を務めたレッドホットチリペッパーズと、サマソニ2017のトリを務めたフーファイターズだった、等々。

もし、本当に「高度に発達した文明」の持ち主が、この宇宙と地球を彼らのコンピュータ内でシミュレーションしているとしたら、そのゴールは、その住民であるぼくら人類自身が、宇宙をシミュレーションできる段階まで到達することではないか。

それはつまり、世界の終わり。

だが、シミュレーションの住人でありながら、そんなシナリオを根底から覆し、世界を救う「マトリックス」のネオのような存在がBABYMETALなのかもしれない。

だって「THE ONE」では、

「♪Tell me why, if you know this is the end of the world…」

と歌っているじゃないか。

なんちて。妄想全開でお送りしました。