巨大キツネ祭りLV(2) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日10月18日は、2013年、BABYMETALがタワレコ「15の夜」@赤坂Blitzに出演し、2015年、WOWOWで「巨大天下一メタル武道会」が放送された日DEATH。

 

(承前)

ライブ会場では、ピットでは最前列でもなければ、前の人の頭や手の隙間からしか生の三人は見えないし、シート席からは小さくしか見えないので、ステージの前にいるカメラマンがとったプロショットをスクリーンで見ることになる。

だが、LVではアングル的にはピットから見ているのに、前に遮るものがない状態で三人の姿をバッチリ見ることができる。しかも周りには会場と同じくベビTを着たメイトさんが密集していて、会場と一体化して合いの手や拍手や歓声やキツネサインをすることができる。なかなかいいもんですよ。

お口に手を当てる「YAVA!」のポーズでアップになるYUIとMOAの表情。カワイイ&大迫力。

大歓声の中暗転すると、静かなオーケストラのSEとともに、会場が青いレーザーの光と雲海になる。もちろんLV会場には飛んでこないが、大画面なのでその中にいるような錯覚に陥る。やがてピアノのアルペジオに変わると色調は赤く変わる。その赤い霧の中のステージにマントを着たSU-METALがゆっくりとせりあがってくる。

「♪幾千もの 夜を超えて 生き続ける愛があるから…」

歌い出すと、大阪城ホールもLV会場も、息をのむように静まり返る。

隣のメイトさんは、両手の“気”を、あおぐようにSU-に送っている。

SU-の表情、まなざしに万感の思いがこもる。何という表現力。

そして、大音量のバンドのイントロが入ってくる。SU-の表情が熱気を帯び始め、小刻みに足と肩でリズムをとると、両神のギターのピッキングハーモニクスが刃のように空間を切り裂く。ここでようやく会場は「ウォー」という嵐のような歓声。そこにSU-が「アカツキだー!」と叫ぶ。

ぼくの周囲にいたメイトさんが、次々に柵を出ていく。最前柵で始まったサークルモッシュに加わるためである。ミノさんも飛び出していく。LV会場でモッシュ発生。

ぼくは逆にSU-の歌に金縛りにあったように動けなくなった。去年、東京ドームで聴いたときも、3週間前SSA2日目に次女と聴いたときにも心を打たれた。しかし今日の「紅月-アカツキ-」はさらに凄かった。1セントも狂わないピッチ、歌詞の内容を伝える抑揚や陰影。声は、あらゆる楽器の中で、最もダイレクトに演奏者の感情を表す。

そして、歌い手の人生経験によって、歌には“命”が宿る。

SU-が中学3年生の頃は、「一途」。海外で苦闘する高校生の頃は「強さ」。

そして去年は、あらゆることをのり越え、みんなに伝えたい「思い」を感じた。

そして今のSUが歌う「紅月-アカツキ-」には、「深さ」を感じる。

激しい曲なのに一瞬静かに思えたり、熱い気持ちを表現しているのに優しさを感じたり、文章や言葉では伝えられない、まさに「歌」でしかできない表現をしているのだ。

ぼくは、アイドルの品評会やカラオケ歌ウマ選手権みたいな視線でSU-METALを天才だとおだてているのではない。人の心を揺り動かす歌手として、2017年の日本に、広島生まれのアイドル出身で、まだ20歳にもならない中元すず香というとんでもない才能が、現在進行形で成長しているよ、ということをどうしても伝えたいのである。

大感動の中、舞台が暗転すると、「♪ドンドンドン、ドンドンドン、ドンドンドンドンドンドンドン」という三々七拍子。観客はすかさず「ハイ!ハイ!」と合の手を入れる。

ステージにスポットライトが当たると、YUIとMOAが手を叩いている。

この曲では、これまで何度も聴いたライブ会場では感じなかった「GJ!」のブラックメタル性を初めて感じた。YUI、MOAの二人組は2012年当初、巨大勢力“アイドル”にたぶらかされて「ダークサイド」に堕ちてしまったという意味でBLACK BABYMETALと呼ばれた。それが2016年の「Metal Resistance」で、「GJ!」と「Sis. Anger」が、BBMによるブラックメタルであるとされて、ちょっと違和感を覚えていた。ブラックメタルは、デスメタルの悪魔崇拝的側面を強調し、実際に教会を燃やしちゃったり、メンバーを殺しちゃったりする、マジで危ないメタルムーブメントであって、いくらコワく見せようとしたって、YUI、MOAの対極にあるものだと思うからだ。今でもその思いは変わらないが、SSA、LVと見てきて、ひとつだけブラックメタルっぽい要素を感じた。それは、ギターのフィードバック音である。大音量のスピーカーにギターのピックアップ部を近づけると、回路に音が循環して「うわーん」とか「きーん」とか聞くに堪えない音が出る。これをフィードバックというのだが、HR/HMのギタリストはこれを効果的に使って、凶暴な雰囲気を演出することがある。

BABYMETALの楽曲のギターは、メタル系の基本で、高音と低音を強調して中音域をカットする、いわゆるドンシャリの音になっている。しかし「GJ!」では、藤岡神、大村神のどちらか、あるいは両方が、イコライザーの設定で中高音域を強調もしくはエフェクトを入れて、フィードバック音を加えている。音源でもシンセのハーモニーで不吉な雰囲気を出しているのだが、ライブではそこにフィードバック音を加えることによって、より凶暴で不穏な感じを出しているのだ。

もちろん歌詞は、緑の通勤電車に乗ったら、発車のベルがデスボのWALL OF DEATHに聴こえて、ラッシュアワーはサークルモッシュだとか、カワイイ女子学生もしくはOLのメタル妄想みたいな内容だから、ぜんぜん危なくはない。だが、曲終わりにギターのフィードバック音が余韻として残ることで、あ、なるほどブラックメタルだ、と思った。今回初めてこれを発見したのは、ギタリストが少し工夫したか、PAが進化したか、あるいは前からやっていたのに、ぼくが気づかなかったかのいずれかだと思う。

会場に白い格子状のレーザー光が飛ぶ。不穏なSE。スクリーンには心臓の鼓動を表すオレンジ色のパルスのグラフが映る。遠くからギターのリフ音。LV会場でも歓声と口笛。

SEの音量が高まると、ステージがまばゆい白い光に包まれ「シンコペーション」が始まる。

やっぱり何度見てもこの曲はカッコいい。観客は「スキ、キライ、スキ、キライスキ!」のところは合いの手を入れるのだが、「回れ!」「巡る!」「飛んで行け!」はやってくれませんなあ。

暗転し、今度は「♪ドンドンッ、ドドン」というドラム音。観客はすかさず「メタ!」と叫ぶ。

「♪メタ―太郎、メタ―太郎、君はヒーローさー」と歌うSU-の顔は「紅月-アカツキ-」とは別人のようにニコニコしている。YUIの「♪ずっとむかしもっとむかしはるかかなた」、MOAの「♪銀河系の澄んだ星で生まれました」も嬉しそうである。

「♪さあ立ち上がろうよ」で、観客は「♪Woo Woo Woo…」とさっそくコーラスに入る。

「♪ぶっ飛ばせーメタ太郎」で、SU-がバットをふる瞬間だけ、クライマックスシリーズが頭をよぎる。

2番に入ると、三人はニコニコしながら、右手をおでこから右斜め上に挙げる敬礼ポーズ。振付は途中で手を下げるのだが、観客はかまわず敬礼ポーズをとり続ける。もちろんぼくらLV会場も同じだ。大阪城ホールとLV会場は、時空を超えて一体化する。そしてシンガロング。

「♪Woo Woo Woo Woo…」

途中SU-が「Everybody Singin!」と煽り、バンドが止まる。転調せずにそのまま続く。BOH神がベースで加わる。16小節。

バンドが入った瞬間、転調。観客はちゃんとついていく。

SU-の歌が「君に聴こえているか、仲間の声…」と入る。聴こえているとも。2017年10月16日、大阪城ホール2万人に加えて、東京Zepp Divercity 2400人、名古屋Zepp Nagoya 1800人、大阪Zepp Osaka Bayside 2800人、合計2万7000人が同時に歌っているのだ。

アップになるSU-の顔も、YUIの顔も、MOAの顔も汗まみれ。だが、何とも言えず晴れやかである。

曲の終わり大歓声の中、暗転。おなじみの「紙芝居」(英語版)がかかる。「Why do people hurt each other?」…。「イジメ、ダメ、ゼッタイ」である。

スクリーンに映る「WALL OF DEATH」で、大阪城ホールもLV会場も「WOD」コールが始まる。ピアノがイントロを奏で始める。海外なら観客は「♪ルルルー、ルルルー」と歌うのだが、日本のライブの観客は手拍子になる。

ハミングを終えたSU-の顔が豹変し、イントロが始まる。鋭い目つきで下手のYUI、上手のMOAを確認。「♪あー」で、スモークの中、ステージ上を走るYUIとMOAを、上から撮った映像が追う。ちょっと新鮮。

最前の柵では、またもモッシュが始まり、ぼくの周囲からさらに人が消える。大阪城ホールでも、小分け柵の中で楕円サークルモッシュが発生している。そりゃそうなるわな。

両神は、ギターをESP製BABYMETAL ARROWに持ち替えている。この曲にはやはりフライングVが似合う。

観客は、「イジメ」「ダメ!」、「キツネ」「飛べ!」と正確にジャンプ。2万人の大観衆が同じポーズで同時にジャンプしているのを見るのは壮観だが、時空を超えたLV会場でも同時に同じことをしているというのは、不思議な感じがする。

安定のフィニッシュから、すかさず舞台が青く染まる。

「KARATE」である。SSAで見たのは、三人の動きにスクリーン上でCGによる“気”が重なる演出だったが、LVでは生身の三人とスクリーンの三人の区別がつかなくなる。というかそれもまたスクリーンの中の出来事なのだ。もう時空も、バーチャルと現実の区別もつかなくなる。本当に奇跡が起こっているような気がする。

ブレイク。煽りが一切ないウェンブリー仕様。SU-が、倒れて何かにすがるような目をするMOAと空を見つめるYUIを助け起こし、アイコンタクトをしながら「♪セイヤソイヤ戦うんだ…」と前へ進もうとする。この三人の「演技」に、観客は「Everybody Jump!」と叫ぶ心の中のSU-の声を聴き、自主的にジャンプした。

最後のシーンはやはり、拳をキツネサインに変え、胸に収める一瞬前に照明が消される。

大阪城ホールの2万人も、ぼくらLV会場の全国7,000人も、「KARATE」の映像を心の中に秘めていて、いつでも再生できる。SU-のいうとおり、BABYMETALはいつでもぼくらのそばにいるのだ。

不穏なオルガンのイントロ。

「♪伝説の黒髪を華麗に乱し…」と歌いだすSU-。YUI、MOAが加わり、横振りヘドバンで舞台前面にせり出してくる。「ヘドバンギャー!!!」である。

「♪もう二度と戻らない わずかな時をこの胸に刻むんだ15の夜を」

ふいに、なぜBABYMETALが、2016年には封印していたこの曲を、今年の国内ツアーで演奏し続けるかが腑に落ちた。

2012年、15歳になるSU-は、メタルにハマった少女の、いい子ちゃんだった子ども時代と訣別する成長の一瞬をこの曲で表現した。それが「15(いちご)の夜」の意味だ。

そして今、10代最後の年を過ごす心情を、この曲で再び表現しているのだ。

ブレイクのヘドバン地獄。SSAより8小節長い。MOA「聞こえないよー」、YUI「まだまだ足りない」と叫びながら、CO2を下手、上手のステージ袖でぶちまける二人の表情はまだまだあどけない。こういうバカ騒ぎをやりながら、しかし、この曲の歌詞は切ないほど深い。

「♪もう二度と戻れない わずかな時を思い出に刻むんだ15の夜を」

最終節で、歌詞は「戻らない」が「戻れない」に変わり、「この胸に」が「思い出」に変わる。これによって、「わずかな時」の切実さと、大人になっていく決意が表現される。SU-はここを気持ちを込めて、はっきりと歌う。12月には20歳。「洗礼の儀」が行われる。

三人が人形ぶりで倒れ込むと、スクリーンには、暗闇の中を飛び交う銃弾のような映像が映る。イントロとともに、ベビメタフラッグを持った三人が登場。「Road of Resistance」。戦場の雄たけびが聞こえる。

SU-が、観客席を分けるようなしぐさをする。WODの指示である。

「モッシュ、ダイブ、連続してのハイジャンプは禁止」というアナウンスがいくらあっても、女神様にこのしぐさされたら、やるにきまってるでしょうが。

「♪1234」で曲が始まったとたん、大阪城ホールのピットでは、一瞬数えただけでも6カ所の小分け柵で、楕円形小規模サークルモッシュが発生。

番号指定の逃げ場のない柵の中で、巻き込まれたくない人にはたまったものではない。だから、ピットはもう少し大きい柵にしてあげないと、かえって危険なのだ。

クライマックス。「♪そうぼくらの未来、On the way!」のあとのSU-の雄たけびは、

「かかってこいやあ!!!」

そう、20歳の「洗礼の儀」を広島で迎えるSU-、そしてYUI、MOAが来年3月に高校を卒業するBABYMETALには、これから、日本人の誰も経験したことのない、とんでもなく素晴らしく、過酷なアーティスト人生が待っている。巨大キツネ祭り最終日、SU-の雄たけびには、そのすべてを受け止め、闘いとっていく気概があふれていた。

「♪進めー答えはここにある」とステージを指さすSU-。

「ここ」とは観客-THE ONEとともにあるライブ会場のことだ。

2010年11月のデビューから、2017年の巨大キツネ祭りまで、国内、海外それぞれ累計100万人以上、合計200万人以上の観客が、生でBABYMETALのライブを観た。(ライブ会場収容人数、フェス動員数の集計by jaytc)

だが、それは一つひとつのライブで、BABYMETALが全力でパフォーマンスしてきた結果である。答えは、ライブ=「ここ」にあるし、「ここ」にしかないのだ。

それを示すかのように、スクリーンにはメタルの銀河から、会場内をパンしながら、一人ひとりの観客=THE ONEを映し出す。

そして、ファイナルソング「THE ONE」が始まる。

黄金色に輝くガウンを着た三人は、ひたすら神々しかった。

「♪ららららー」

舞台中央で指を合わせる三人が、短いアウトロとともに消え、ステージ上の筒が爆発し、金の紙吹雪が舞い散って終演。

さあ、ここから第5の扉が開くのか?

しかし。

結論から言えば、「紙芝居」は前日10月15日のものと同じだった。

12月2日、3日、広島県立総合体育館グリーンアリーナ、ライブ名はLegend-S-。

詳細はお伝えしたとおりである。

その他に、「三つ目の狐」から想像される3rdアルバムのリリース、来年のワールドツアーの予告情報はなかった。LVは「5枚目の扉」ではなかったのだ。

「紙芝居」終了後の追い出しBGMは「From Dusk Till Dawn」だった。

これで、夏の5大キツネ祭り9公演、秋の巨大キツネ祭り4公演が終了。

謎はまだまだあるが、12月2日、3日の広島グリーンアリーナでのライブは、大きな意味のある公演だとわかっており、「ロス」感は少ない。当選してもいないのに、もう行く気になってる。

終演後、同じ柵になんとsin-Metalさん、no-Metalさんがいた。で、三人で飲みに行った。

7月まではお互い見知らぬ同士だったのに、もう戦友。いやあ、BABYMETALってホントにいいもんですねー。

 

P.S

「META!メタ太郎」で、当初「ナチス式敬礼」と書いた部分は、読者からの誤解を生むとのコメントを受け、「右手をおでこから右斜め上に挙げる敬礼」と修正しました。ご指摘ありがとうございました。