巨大キツネ祭りへの道(3) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日9月25日は、2013年、DVD 「Live Legend、I、D、Z Apocalypse」のTrailerが発表された日DEATH。

 

9月23日から始まったNHK土曜時代劇ドラマ「アシガール」。いいね!

引きこもりの弟が発明したタイムマシンのせいで、陸上部の期待の星、女子高生の唯(ゆい)が、戦国時代にタイムスリップし、当地を治める大名の御曹司、羽木忠清(はぎただきよ)に一目惚れ。彼を守るため足軽、唯之介(ゆいのすけ)となって天下統一を目指す!という中二病歴女の定番ストーリー。原作は「ごくせん」、「デカワンコ」などドラマ化された作品も多い森本梢子の『ココハナ』(集英社)連載のコミック。

唯(ゆい)を演じる黒島結菜(くろしま ゆいな、1997年生まれ、沖縄出身)は、昨年の「時をかける少女」(日テレ)に続くタイムスリップものの主演となる。原田知世以来、彼女ほどタイムスリップが似合う女優も珍しい。2017-2018年シーズン、ブレイクの予感。

行方不明の息子の代わりに、唯(ゆい)の戦国時代でのお母さん役となる、ともさかりえの存在感がいい。

中央集権のありかを巡って群雄割拠した日本の近世たる戦国時代が、パプアニューギニアの部族抗争みたいに描かれる底の浅い演出が気になるが、コミック原作らしいストーリーのわかりやすさと主演の魅力で引っ張っていく。全12回。12月中旬まで続く。

 

季刊メタル専門誌『ヘドバン』Vol.15(シンコーミュージックエンタテインメント)のキャッチコピーは、「お前のハードロックは燃えているか お前のメタルは燃えているか」。

いつもながらアツい。

まあね、一年中燃えっぱなしじゃ、マトモな職業生活や社会生活が営めないよなあとかツッコミながらページをめくる。そして…泣いた。他の雑誌には書かれなかったこの夏のBABYMETALの真実があったからだ。

P.12から20ページ以上にわたって、サマソニと5大キツネ祭りのレポート、関連記事が続く。

サマソニ幕張のレポートは、林幸生によるもの。

あのSU-の叫びを、全部ひらがなで記すか、漢字かな混じりにするか、ビックリマークをどこに入れるか。それが、その人の人柄や思い入れを表す。

林幸生の表記は、「遂に…遂にここまで来ました!!!」。

「ついに」は、「成し遂げた」という意味を込めてか、漢字。2つの「遂に」の間に「…」が入り、ビックリマークは3つである。ここに彼の思い入れがある。

林幸生は、2012年のSide Show Messeにいた。彼は書く。「サマーソニックで一番小さな場所から一番大きな場所へ。ここにくるまで、実に6年かかった。」

「BABYMETAL DEATH」は、2012年には、ショートVer.で「色物アイドル」のギャグのようなフィニッシュ曲だった。それが、今や堂々たるメインステージのトリ前。

6年前のその瞬間に立ち会っていないぼくにとってはBABYMETALの入場曲=Overtureとして使われている聴き慣れたロングVer.だが、林幸生にとっては、「2012年のライヴがときを越えて、今ここにつながっているような錯覚すら覚える。」という深い感慨として記される。

そして、「Catch Me If You Can」の神バンドソロで、スクリーンに映る観客の顔を見て、彼は「この大観衆がメタルで笑顔になれる日がくるなんて思いもしなかった。」と記す。後述するが、水と油だったメタルと笑顔をひとつにしたのがBABYMETALの真価なのだ。そして常連ならではの、ライヴ中にふと感じる感覚、「楽しい時間は泡のように夢のように消えていくのを感じてしまった。結実は終焉でもあるのだ。」という言葉。

だが、本当の感動はすぐそのあとにやってくる。

-引用-

「遂にここまでやってきました!」というSU-METALの言葉が胸に突き刺さった。本当に心から発した言葉なのだろう。あまりにも大きな意味があり、彼女たちのこれまでの全てを凝縮したような言葉だ。「ここで大きなサークルが見たい!」と笑顔で叫ぶSU-METALの言葉。世界中のワンマンやフェスで、サークルを何度も作り上げた彼女が見たかったものはここにあった。呼応するかのようにピット上で巨大なサークルが生み出される。その全ての出来事に、涙腺がゆるんでしまう。冷静に見ようとしても、あまりに、あまりにこのサマーソニックのメインステージ、そしてトリ前のこのステージには思い入れが生まれてしまうのだ。全ての楽曲、全ての言葉に、これまでの国内や海外での姿がフラッシュバックし、濃密な一句、1秒が刻まれていく。(『ヘドバン』Vol.15 P16-17)

-引用終わり-

文章の中にいくつもいくつも「言葉」という単語が出てくる。BABYMETALの登場とともに創刊された『ヘドバン』のライターとして、メタルを言葉で表現する者として、サマソニ2017幕張のあの情景が、どれほど深い意味を持っていたかがわかる。

レポートは、「もう、頭の中にはこの6年間の思い出が浮かび続け、気付けば、自然と目に涙が浮かんでいた。」と続く。

これぞ、『ヘドバン』的BABYMETALレポート。

ロック史に残る歴史的存在としてのBABYMETALは、同時代に居合わせたぼくらの自分史においても歴史的な存在なのだ。

P.24からは7月18日からの「黒キツネ祭り」「赤キツネ祭り」「金キツネ祭り」@赤坂Blitz、7月25日からの「銀キツネ祭り」「白キツネ祭り」@Zepp Divercityのレポート。それぞれ別のライターが担当しているが、2017年における各ライヴの意味や意義をきちんと提起しており、ぼくの気づかなかった視点を提供している。

まず、荒金良介による「黒キツネ祭り」(7月18日)のレポート。

1時間に満たないライヴ時間を「100メートル走を世界最速で走破するトップ・スプリンターを想起させた。」と記し、「META!メタ太郎」が野太い男性のシンガロングと、ダンスと演奏の整合性によって、「今まで観てきた中でダントツのかっこ良さだった」と記す。

つまり、荒金氏の観方では、男性のメタルヘッド限定のこのライヴで、BABYMETALはこの夏、まず「深淵な世界観を研ぎ済ます一方で、メタルヘッズを血祭り状態の肉弾戦へと導く」という男くさい“スラッシュメタル性”ないし“デスメタル性“を証明したということなのだ。

続く7月19日の「赤キツネ祭り」は、古知屋ジュンによるレポート。

古知屋氏は、「ドキドキ☆モーニング」の三人が倒れるシーンに、「キャーーーー」または「ギャーーーー」という大歓声が上がったことを特記している。

東京ドーム2日目、3階席のぼくの後ろには若いメギツネさんの2人組がいたのだが、彼女たちは、スクリーンに大写しになるYUIやSU-やMOAに、「うひゃー、カワイイ!!」と驚嘆の声を上げていた。

BABYMETALのKawaiさは、ドルヲタに商品を売りつける手段としてのエロス的なカワイさではない。神的な領域にまで達した美しさやピュアさ、凛々しさ、カッコよさ、清々しさを含んだ概念であり、だからこそ同性が憧れ、応援すべき「正義」そのものなのである。「赤キツネ祭り」は、BABYMETALの中に戦う女性の原型を見る女の子たちの祭典であった。

続く10代限定の「金キツネ祭り」(7月20日)。レポートは阿刀“DA”大志。

ふだんは中高年が目立つベビメタのライヴ会場だが、今回は夏休みの中高生が主力。そして、その光景はまさに感動的だった。阿刀“DA”氏は記す。

-引用-

開演5分前のアナウンスが流れると、自然と「BABYMETAL!」コールが沸き起こり、それと同時に興奮を抑えきれない観客が一気に前方へと詰めかけ、後方のエリアがガラガラになってしまった。この前のめりな雰囲気にあてられて、早くもグッときてしまう。(『ヘドバン』Vol.15 P.28-29)

-引用終わり-

憧れのベビメタを少しでも近くで見ようとして、前へ押し寄せるのだが、モッシュ、サークルは遠慮気味で小さく、禁じられたクラウドサーフは皆無だったという。わかる。歴戦のライヴ経験で、見知らぬ人でも恥も外聞もなく体をぶつけあい、阿吽の呼吸で狭い柵内でもぐるぐる回るぼくら中高年とは違って、どこか奥手で生真面目な若さそのもので、微笑ましい。だが、阿刀“DA”氏はこう書く。

「彼らはBABYMETALを入り口にしてメタルを聴くことになるのだろうか。そうなったとき、10年後20年後、きっと彼らは誇りと共にこう言うんだ。「メタルの大事なことは全部BABYMETALが教えてくれたんだ」と。

そう、「金キツネ祭り」は、メタルの種まきだ。

1970年代、地方都市の高校生で老舗の「ミュージックライフ」とか、創刊されたばかりの「Rockin’ On」「ロッキンf」とかの数少ない情報を頼りに、デパートのプレイガイドでチケットを買い、夏休みに東京で行われるロックバンドのライヴに行くような奴は、クラスで一人、学年で数人と、圧倒的少数派だった。それが日本のHR/HMの最初の客層であり、幾千の夜を越えて、BABYMETALによって蘇った。

「金キツネ」に集まった若者たちは、今までBABYMETALには近づかなかった子たちかもしれない。

同世代のカワイイアイドルの女の子が海外で評価されているといっても、チケットもなかなか取れず、オヤジ世代が多くて近寄りがたかったからだ。だが今回は10代限定。チケットもとれた。そして心弾ませて東京へ来て、BABYMETALを生で見た。それが10年、20年先のメタルファンとなる。

BABYMETALは、「自分たちだけが売れればいい」というのじゃなくて、メタルの概念を拡張し、ジャンルそのものを訴求し、客層を開拓しているのだ。

その姿勢は次の「銀キツネ祭り」(7月25日、Zepp Divercity)で、より鮮明になる。

レポートは林幸生。

2階席の小学生と保護者の「Royal Fox Seat」へ向かう列は、「ポケモン」や「ドラえもん」の映画館のような雰囲気で、「BABYMETAL DEATH」が始まった時には、初めて体験する爆音に不安顔の子もいたという。だが、セットリストが進むにつれ、2階席の大半はキツネサインを掲げて笑顔になっていた。それを林幸生は、

-引用-

メタルが文化として根付いているイギリスで見た光景そのもの。「アイアン・メイデンのライヴを家族で見て、笑顔で盛り上がれるなんて最高じゃないか」と憧れていた状況に近い。今まで日本のメタルにはなかった状況が、この会場で起きているのだ…!(『ヘドバン』Vol.15、P.31)

-引用終わり-

と書いた。ぼくが疑問に思っていた、子どもも楽しめる「META!メタ太郎」が「銀キツネ祭り」のセトリには入らず、ハードルの高そうな「The One」の英語Ver.だったことにも合点がいった。

60代の祖父母、30-40代の父母、そして子ども世代の小学生という3世代にわたって楽しめるメタルとは、必然的に「世代の壁を越え、言葉の壁を越え」ること、世界は地続きで、その気になれば羽ばたけるという実例を示すことだったのだ。

こんなバンドは、今まで日本にはなかった。せいぜい70-80年代にお母さんがハマったJ-POPバンドを成人した娘と一緒に観に行くくらいだ。ましてメタルバンドではありえない。

ド派手で、衝動的で、反体制的で、おどろおどろしいイメージを売り、一時マニアックなファンがついても、いつの間にか飽きられ、忘れられてしまう。そういう売り方をしてきたから、日本のロックやメタルは衰弱していったのではないか。

世の中には様々な業種があるが、業界のトップメーカーというものは、自分の会社の商品が売れればいいというのではなく、その業界そのものの魅力、品質の高さ、サービスの社会的有益性を訴求し、業界全体のイメージアップに努めるものである。

BABYMETALは、まさにそのやり方をしている。日本のロック界、メタル界に「叛旗を翻す」のではなく、ロックというもの、メタルというジャンルそのものの魅力と継続性を、清々しいまでにわかりやすく訴えている。ベビメタを意図的に取り上げないメジャーロック誌の編集部は、まさにそのことによって、後世のロックファンから、頑迷で不見識だったと切り捨てられても仕方ないだろう。

そしてBABYMETALには、赤、金、銀だけでなく、家族連れでにぎわう夏休みのDivercityビルのフードコートや、大阪USJ周辺を白塗りの群れで埋め尽くし、非日常空間を現出させた、圧倒的にギミカルでブルータルな「白キツネ祭り」もある。

早川洋介によるレポートの締めの言葉は「HAIL!」(P.33)。讃えよ、敬え!

今のBABYMETALには、その言葉がよく似合う。

『ヘドバン』Vol.15には、BABYMETALのほかに、サマーソニックのBand-Maid(P.50-53)、8月4日恵比寿Liquid RoomのPassCode(P.54-59)のライヴレポートも掲載されている。

色合いはそれぞれ違うが、日本のアイドル文化・サブカルチャーを対象化して、ラウドロック、ハードロックのフォーマットで表現し、新しい音楽シーンを切り拓いている女性ユニットだ。BABYMETAL同様、他のロック音楽誌にはきちんと取り上げられていないが、一度ライヴを観ればわかる。常識を覆すような圧倒的なパフォーマンスだ。

戦後のWar Guilt Information Program同様、日本のロック界は、ロック=反体制という固定観念に縛られている。

だが、ロックという音楽は、悪や反抗、反体制的だったからではなく、そういった主張も含めて、演奏し、歌い、パフォーマンスする生身の人間の凄み=「人間の真実」があったから、多くの人が惹かれたのである。本当は腹黒なのにブリッ子のアイドルとか、本当は素朴ないい奴なのに偽悪を気取らせるとか、そんな「売らんかな」はすぐにメッキが剥げる。

引きこもりのように固定観念を死守して滅びるのか、それとも扉を開けて新しい地平へ挑むのか。

その答えが、巨大キツネ祭りにはある。

いよいよ明日だ。

 

P.S. 26日は朝から物販列に並びます。27日は娘を連れていきますが、学校が終わってからなので、開演ぎりぎりになるかもしれません。

胸にJAYTCという名札をつけていますので、見かけたらお気軽にお声がけください。手作りマグネットを贈呈いたします。