夏フェスレポート | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日9月11日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。

 

2001年9月11日は、アメリカ同時多発テロが勃発した日。亡くなった3000人余りのご冥福をお祈りします。

今は、ぼくが生きてきた中で一番、「戦争」に直面する可能性が高い北朝鮮危機の真っ最中ですが、国連安保理決議待ちで、金正恩が吠えたけど、今日はとりあえず何もありませんでしたね。

 

9月に入り、夏フェスの総括記事を掲載した雑誌が出回り始めた。

「フジロック&サマソニベストライヴアクト決定!」の文字が躍る『CROSSBEAT Special Edition』(シンコーミュージック・エンタテインメント)と『ROCKIN’ ON』最新号を書店でパラパラめくってみたが、BABYMETALのベの字もないことに驚いた。

Summer Sonic 2017でのBABYMETALのライブ・レポートをちゃんと掲載しているのは、今のところ、『PMC(ぴあMusic Complex)』Vol.10だけである。

『ヘドバン』Vol.15が出れば、ちゃんと掲載されているのだろうが、少なくともこの二誌の編集姿勢には?を覚えた。

たくさんあるステージのいくつかで、人気急上昇中でも、アイドル系、ポップロック系のバンドが「なかったこと」にされるのなら、まあわかる。ベビメタだってそういう扱いには慣れている。当然二誌ともPasscodeやBand-Maidはスルーされている。

あるいは、二誌が相当マニアックな領域のバンドしか扱わない専門誌であるなら、編集方針が偏っていてもかまわない。出版の自由だ。

しかし、『ROCKIN’ ON』はロック総合誌だし、『CROSSBEAT』も「ベストライヴアクト決定!」と謳っている。

2017年夏、BABYMETALは、過去X-Japanほか数組しかいない日本を代表する夏フェスであるサマソニの、メインステージの大トリ前(2ndヘッドライナー)を務めたのだ。

Foo Fightersは記事になっているのだから、当然記者はその場にいたはずで、取材していればわかるだろうが、BABYMETALのパフォーマンスは、客観的に見て、演奏そのものもスタジアム・メタルとして完璧だったし、巨大サークルピットをいくつも作った観客の熱狂もすさまじかったし、2012年のフードコートから上り詰めたジャパニーズ・バンド・ドリームのロールモデルとして伝説的なステージだったのに、一言も触れないというのは、編集部が意図的にカットした以外の何物でもないだろう。

詳しくは読者諸賢が二誌を店頭で手に取って見ていただき、どんなバンドを取り上げ、どんなバンドを無視しているか、各々評価していただくしかないが、サマソニのベストアクトを決めると言っているのに、BABYMETALのべの字もないし、その前のMan With A Missionもなぜだか意図的に外していることに違和感を覚えた。なんだかなあ。

元愛媛県知事の加戸さんの国会証言と同じく、報道しない自由だな、こりゃ。

その反対に『PMC』Vol.10は見開きカラー6ページ、感動的なライブ・レポートだった。

特に、2012年のフードコートのSide Show Messeの際のSU-、YUI、MOAひとりひとりの感想とか、2013年のRainbow Stageで、「See You!」と三人が去っていった直後、観客がどよめいた異様な雰囲気とかをちゃんと見てきたライター氏が書いている文章は、それ自体貴重な歴史的証言となっている。

そして、2017年8月20日、ほぼ正面のPAブース前から見ていた彼は、YUI、MOAのステージ一杯を駆け回るパフォーマンスに、「このくらいの大会場、いくつも経験してきたんだから」という自信を感じ取り、SU-の完璧な歌唱と神バンドの気合のこもったアドリブに今更ながら凄みを感じたようだ。その彼の興奮や感動、BABYMETALという不世出のアーティストに対する畏敬の念が、文章からほとばしっている。

結論部分は、ぼくがこのブログに書いてきたものと全く同じである。

すなわち、今、ぼくらは日本の音楽史上、歴史的なバンドを目撃しているのだという思いである。

 

「“アイドルとメタルの融合”をコンセプトに2010年に結成されたメタルダンスユニット」、ないし「メタルアイドル」というキャッチコピーを、BABYMETALは降ろしたわけではない。

前者は、公式HPのBiographyのところに書いてあるし、後者は稀にBABYMETALが芸能ニュース等で報道される際に冠詞としてつく。これにアミューズないしKOBAMETALが抗議したということもない。

だが、ぼくらは「アイドルでもメタルでもないOnly OneのBABYMETALというジャンルを創りたいんです」という自己規定を、SU-の口から聞いている。最も早いのが2013年のお正月、日テレ「ハッピーMusic」、一般化したのは2014年11月の「NHK「BABYMETAL現象」。

これによって、ぼくはこのブログのサブタイトルを「アイドルとメタルの弁証法」とした。

弁証法とは、「テーゼ=正(命題)+アンチテーゼ=反(反対命題)→ジンテーゼ=合(止揚・揚棄)」、と段階を追って思考する考え方のことであり、ドイツの哲学者ヘーゲルは、それを『精神現象学』で展開した。

アイドルをテーゼとすると、アンチテーゼに当たるのがメタルであり、そしてジンテーゼにあたるのがBABYMETALである。弁証法の考え方は、テーゼとアンチテーゼが単純に混じり合うということではなく、テーゼが、アンチテーゼによって自己照射され、今までの悪い部分が捨てられ(揚棄)、良いものが、より良いものへと発展していく(止揚)というところに特徴がある。

したがって、BABYMETALとは、メタルという音楽ジャンルを取り入れることによって、アイドルの中の悪い部分(オタク、萌え、疑似恋愛、サイリウム)が捨てられ、良い部分(観客の心を動かす、誰かの笑顔の理由になりたい)が発展して、Only OneのBABYMETALとしか言いようのないものになったのだ、ということができる。

ただ、これは、少なくとも2014年頃まではアイドルを志向していたメンバー三人の視点で見ればそうなるのだが、KOBAMETALから言えば逆の構造になる。

つまり、彼にとってはメタルがテーゼであって、アイドルがアンチテーゼ。したがってBABYMETALとは、アイドルという手法を取り入れることによって、メタルの悪い部分(乱暴、保守的、怨念、男臭さ)が捨てられ、良い部分(激しさ、明るさ、感情の解放、弱者の励まし、世界をひとつにする)が発展したのがBABYMETALであるということになる。

まあ、こんなのは単なる概念操作に過ぎず、BABYMETALの一番凄いところは、そういうリクツが「見ればひと目でわかる」というわかりやすさである。

三人は可愛いし、神バンドの演奏は凄いし、メタルなのに振付でキレッキレに踊るし、SU-の歌唱力と、クイーンぶりによる観客の熱狂する様は、文字通り「Best Live Band」(Kerrang! Awards 2016)である。

だから、『ROCKIN’ ON』と『CROSSBEAT』がBABYMETALを意図的に自分たちの雑誌から外したのは、自分たちの好きな音楽は○○である、BABYMETALは○○ではない、という価値基準を守るため、保身のためなのだろう。

○○に何が入るのかは、よくわからない。

欧米の有名アーティスト、ロック・メタルの教科書で習ったジャンルの枠に当てはまるバンド、タイアップで広告費が確保できるバンド、売れてないけど編集長の感性の鋭さを自慢できるバンド、というか編集部に挨拶に来るバンド…。

こういうのを本当に「了見が狭い」というのではないか。

”世界征服”の最大の障害は、日本の腐り切ったマスメディアや既得権にどっぷり浸かった音楽ジャーナリストかもしれない。