廣田あいかの「転校」(1) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日9月9日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。

 

8月31日、白キツネ祭りから帰宅して寝る前にYouTubeをチェックしたら、私立恵比寿中学の廣田あいかが、来年1月3日の日本武道館公演をもって、「転校」(脱退)することを自ら語る動画がアップされていた。

公式サイトその他にも、廣田あいかが「転校」の理由を説明するメッセージがあった。

後半部分を引用する。

 

-引用-

(前略)今までに何度も何度も転校を考えた事はありました。

ですが、

応援して下さるみなさんとおはなしさせて頂くこと

ステージに立って表現させて頂くこと

この2つで続けてきました。

どんなことよりもしあわせをもらえる瞬間で無くなってしまうのが怖かったです。

落ち込んだ気持ちを上回る楽しさや嬉しさがあってずっと支えてられてきました。

いつの時期でもその時、その時、の廣田あいか を応援して下さった全てのみなさんに感謝です。

本当にありがとうございます。

今後の予定は未定とさせて下さい。1月3日までアイドル全力で突っ走らせて頂きます!

いつ、何が起きるかわからないです。

だからこそずっと夢を追い続けます。

芸能は変わらず続けさせて頂くので転校しても、また絶対に会えます!

ただ、アイドル 廣田あいか はタイムリミットがあるので…

今の私でなるべくたくさんの方に直接御礼が言えるといいな。

お会いできますように。

今後とも私立恵比寿中学をよろしくお願い致します。

私立恵比寿中学 出席番号6 番 廣田あいか

-引用終わり-

 

廣田あいかとBABYMETALの関係は、2011年2月の「月刊Melodixアイドル下剋上」での水野由結との「胸キュンセリフ対決」、2013年7月の「ビッグコミックスピリッツ」のグラビア共演で、菊地最愛が「私アイドル好きなんで、顔がニヤニヤしちゃうんですよ」と言った動画が思い浮かぶ。

2017年8月24日の日テレ「NEWS ZERO」の「ZERO Culture」コーナーで、松野莉奈亡き後、全国ツアーを行ったエビ中の最終公演、東京国際フォーラムで、「感情電車」の松野莉奈録音パートを聴かされて、メンバー7人が号泣した映像が流れたことは以前書いた。

そこに至るまで、藤井ユーイチ「校長」以下のスタッフが、ラスベガスに連れて行って本場のエンターテイナーの在り方を学ばせたり、冠番組「スター★ベガス」(BSフジ)で、引き続き様々なことにチャレンジさせたりして、愛情深く7人をケアしていたのに感動したことも書いた。

その上でのこの発表。

残される6人のメンタルが心配だが、きっと廣田は6人と腹を割って話すだろうし、6人も最終的には廣田の旅立ちを応援するだろう。

この問題を考察していく前に、9月7日に、私立恵比寿中学の「校長」藤井ユーイチ氏のインタビューが公開されたので、まずはそちらを読み込んでいく。

http://lopi-lopi.jp/detail/16411/

 

インタビュー自体は、8月21日、東京で行われた「アイドルLOUNGEオフイベントVol.7~これからのアイドルマネジメントに求められるもの」という公開イベントで収録されたものなので、廣田あいかの「転校」発表には触れられていない。

藤井氏は大学卒業後、いくつかの会社を経て2007年1月にスターダストプロモーションに入社し、最初は営業担当だったが、2010年から私立恵比寿中学マネージャーになったという。とぎれとぎれで申し訳ないが、とてもいいインタビューなので、インタビュアーの質問をカットし、ポイントをしぼって引用させていただく。

●私立恵比寿中学が3年ぶりにTIF 2017に出演したことについて

藤井氏:TIFには、過去に、“ももクロ(ももいろクローバーZ)のおまけ”でしかなかったエビ中を出してくれた事をとても感謝していますし、アイドル業界がこれほどビジネス的になる前からお世話になった方々には積極的に恩返ししたいな、という想いもありまして。

 

→ぼくの感想:やはり「アイドル戦国時代」といわれた2010年前後から、ここ数年でアイドル業界は「これほどビジネス的」になっていたのだ。

 

●営業からマネージャーに転身したことについて

藤井氏:マネージャーは“営業も含めた全部が仕事”だと考えた方がいいと思っています。変な話、僕は、マネージャーだけで私立恵比寿中学株式会社をやっているもんだと思っているんです。営業だろうが経理だろうが全部すべきだと思っていて。

 

→ぼくの感想:こういう手作り感覚が、川上アキラ氏が開発したスターダストのアイドルグループの特徴になっているらしい。これはKOBAMETALの手法にも共通すると思う。

 

●私立恵比寿中学結成の経緯について

藤井氏:まず、僕が今も所属している芸能3部に配属になって、小学校5~6年生とか中学生とか担当がいない子10人ぐらい、ごそっと担当になりました。そのうち、ももいろクローバーを始めた上司(jaytc註:川上アキラ氏のことだと思う)から「私立恵比寿中学っていうグループを作るから、お前担当しろよ」と話がありました。(中略)

当時、エビ中の子達は小学生から中学生ぐらいでしたけど、やっぱり社内でもアイドルのマネジメント、運営は“イロモノ扱い”だったんです。エビ中の衣装を持ってコインランドリー行った時も、変態みたいとか言われましたし(笑)。その頃エビ中は十数人いて、それを僕1人でやっていました。そもそも皆、アイドル活動ではなく「レッスンの一環だから」って集められたんですよ。だから、最初はアイドルをやる気持ちがなく、部活みたいな感じでしたね。

 

→ぼくの感想:この辺の経緯は、ももクロと共通するが、アミューズキッズからレッスンを経て選抜されたさくら学院とは対極的な感じである。

 

●アイドルグループの運営上、留意している点について

藤井氏:例えば、最初の頃は、「女優志望で芸能事務所に入れさせたのに、いつのまにかアイドルやらされてる!」って思っているご両親もいました。まだ仕事がないタレントが、女優を目指したレッスンの一環だと思ってグループに入ったのに、ある日突然「レッスンのつもりでタラタラやってんじゃねーよ!」って僕に怒られるわけですもんね(笑)。それは、「メジャー契約するから頑張ろうね」って話をして、わかりましたって言ってくれたんですけども。それでも、「やっぱり女優さんになりたい」って辞めてしまう子もいました。アイドルって本当大変なんで…。(中略)見えないところの努力が多いですし、単純に仕事量も多いですから。

 

→ぼくの感想:確かにももクロも、エビ中も初期メンバーの入れ替わりが激しい。さくら学院の場合は、「成長期限定」で卒業があるから、一種のレッスン期間と考えることができるが、エビ中の場合は「永遠の中学生」がコンセプトだから、固定となった現在のメンバーは、アイドルとして芸能活動することに一定の納得や確信があってやってきたのだろうと思う。

 

●「校長」としてファンの前に顔出しすることについて

(中略)でも出続けると「あいつが藤井だ、校長だ」って認識されるじゃないですか。認識される事で、ただのお知らせの文言にも説得力が出てくるんですよ。「一応、運営の長が言っているのか」って認識もされるので、顔出しして良い事もあるんだなって思いましたね。

あとは去年、テレビのバラエティ番組で「マネージャー大相撲」という企画があって、スターダスト代表で出たんですよ。2回戦で負けましたけど(笑)。少しでもエビ中のためになるのであれば、と出演したんです。それがきっかけで大物タレントさんにエビ中を見てもらえればっていうのもありましたし。エビ中が広まるなら、相撲だってとりますし、なんでもやりますよ(笑)。

 

→ぼくの感想:これもスタダ流だが、KOBAMETALだって、骨衣装をつけてはいるが、いちおう「キツネ様の代理人」としてファンの前に出ている。「プロダクト」であることの自己言及性は、日本のアイドル文化の指標の一つだと思う。「エビ中が広まるなら…」の部分は、仕事人としての誠実さを感じる。

 

●アイドルシーンの将来について

藤井氏:僕としてはアイドルシーンを「J-POP化したい」と思っています。

世の中の皆さんに「まだアイドルに対して偏見はありませんか」、という事を問いたいんです。アイドルは 1ジャンルとしては確立しているんですが、アイドルソングを聴いている事を憚られるというか、後ろめたい部分が無くなればいいなというのがあります。

(中略)

エビ中は、すごい方々に楽曲を書いてもらったりしているので、充分普通のJ-POPとして歌ったりしているんですけど、でもそれがそのまんまアイドルの皮をかぶって歌っているとJ-POPにはならないという話しなので…。

(中略)

とにかく、もっとアイドルと他の「J-POPとの壁」が無くなればって思うんです。そういう偏見を取っ払って、普通に聴けるような楽曲もたくさんあるはずなんですけど、シーン全体がそこまで進めていけていないんじゃないかなっていうのが僕の考えです。 いうなれば“アイドル=萌え”っていうのを全部取っ払いたいと思っているんです。

AKB48グループさんとかは「アイドルなのに~」って言われる事は無いと思うんですけど、僕らは「アイドルなのに」、“なのに”が必ず付くんです。とにかく「アイドルなのに何かしている」とかそういう切り口が多い。ただ、それがフックになって跳ねる要素も勿論あるとは思いますけどね。BABYMETALさんなんかは“アイドルなのにメタルをやっている”とか、そういうこともあったりするので、一概に全てを否定しているわけではないですけど。

 

→ぼくの感想:スタダのアイドルは、ももクロ、エビ中のCD数枚しかちゃんと聴いたことがないが、確かに楽曲の作者、アレンジ、作り込みのきめ細かさは、アーティストレベルだと思う。つまりは秋元康が量産した、オタクの疑似恋愛のための身近な商品=「アイドル」の薄っぺらさを脱却して、鑑賞に堪えうるプロダクトにしたいという思いが伝わってくる。

「アイドルなのに~」という言い方自体がおかしいので、70年代~80年代の元祖アイドル=スターたちは、ひとりひとり個性を強調してプロデュースされ、時代を表現するきらめきを持っていた。BABYMETALに言及しているのも、そういう文脈からだと思う。

 

●今後エビ中が向かう方向性について

藤井氏:エビ中をもっと売りたい。いつもそう思っています。

会場も、さいたまスーパーアリーナの上だとドームクラスしかなくて。特に、東京ドームを満員にするのは難しいじゃないですか、どう考えてもアイドルファン以外に売らなきゃいけない。

狙うターゲットを明確化して、そのターゲットに向けた楽曲をJ-POP風に作って売っていきたいなと。(中略)

2017年はあまりにも大変な事があり、そして今後も大変な事はあると思います。問題は山積みですが、1個1個解決しながらやっていくしかないかなと。

年単位で考えるだけではなく、個人個人の将来を考え、最終的に芸能人として食べていける子になってくれればいいなと思っています。

 

→ぼくの感想:やはり、東京ドームを満員にするというのは一つの到達点と考えられているのだろう。そのためには、「モノノフの受け皿」ではなく、J-POPとして人の心を動かすアーティストに成長させていきたい、と。

廣田あいかの「転校」(脱退)が公表されたのは、このインタビューの10日後。この時点で、すでに廣田からの申し出を受けていたと考えるのが自然だろう。

してみると、様々な問題はありつつも、子ども時代から導いてきたプロデューサー(スターダスト流にはマネージャー)として、「最終的に芸能人として食べていける子」という言葉には重みがある。

藤井氏は、責任ある「校長」として、愛情をもってエビ中のメンバーと向き合っていることがよくわかる。

(つづく)