★今日のベビメタ
本日8月24日は、2016年、白ミサ@名古屋Zepp Nagoyaが行われた日DEATH。
TOTAL FATの熱気を引きずりながら、フードコート東側を通って、ジャングルステージで踊るアイドルたちをチラ見しつつ階段を上り、メッセ会場を出る。
プラチナ特権を利用して、専用シャトルバスに乗る。冷房が利いている長距離バスは、超カイテキ。5分ほどでZOZOマリンスタジアム会場へ到着した。
14:15のALL TIME LOWまで、かなり余裕があるので、とりあえずR側(1塁側)にある物販所へ行ってみる。プラチナレーンでなくとも、この時間、物販は空いている。
聞いてみたけど、案の定ベビメタTは売り切れとのこと。RichardさんにベビT買えたら送ると約束していたので、申し訳ない気持ちになる。
Inaba & サラスが終わって入れ替えの間、入場待機になっているので、L側に戻り、プラチナサロンに行ってみる。入場の際もらったワンドリンク引換券を利用し、バーコーナーでレッドブルテキーラを注文。そろそろ痛んできた膝と腰を労わるため、椅子に座って落ち着く。空は晴れて、雲の隙間から陽光が降り注ぐ。空調が利いた屋内のメッセ会場とは違って、マリン会場は野外だからテントの中でも暑い。
場内がどうなっているかわからないから、なんとなくそわそわして、カクテルを飲み干し、L側にしかないプラチナ口から球場内に入る。
しかし、プラチナビューイングエリアは、どのステージでも下手L側にしかないから、一般と同じR/L指定は意味がない。R側にもプラチナエリアを作れというのは、バカ高いプラチナチケット購入者全員の気持ちだろう。
つーか、BABYMETALのときに、プラチナだからゆったり観られるだろうと思って来たのに、モッシュに巻き込まれて激怒していたFoo Fighters目当ての東洋人のおばちゃん、もとい、おねいさんとツレの尻に敷かれているような白人男性のようなカップルもいるのだから、もっと細分化して、各ステージとも最前エリアまたはPAブース前特設椅子席6万円、上手/下手ビューイングエリア3万円、一般アリーナスタンディングエリア1万6000円、後方エリア(マリンはシート席)8000円とかにすれば、観客は目的ごとに散ると思う。まあ、単独ならともかく、フェスでは客の動きが読めないからなかなか難しいのだろう。
ALL TIME LOWは、アメリカ東部出身のポップ・パンクバンド。ポジティブであり、エモでもあり、なんならグルーヴ・メタルと言ってもいい。ホント、評論家やプロモーターが定義するジャンルの境界は曖昧だ。
入場待機の時から大声で「ALL TIME LOW!ALL TIME LOW!」と叫んで盛り上がっていたアメリカ人グループもいたから、熱烈なファンがいるのだろう。
曲調はまさにポップ・パンクで、SWMRSよりはキャッチ―なリフ、メロディで、盛り上がる観客に「Jump!」とか「Dance!」とか言って煽っている。ヘッドライナーのフーファイが1回のライブで「F**k」と叫ぶ世界記録を持っているので、それを意識して観客にC&Rよろしく「F**k」と言わせたりもしている。一応、「オイ!オイ!」とか「イエーイ!」とか言って、聴き取れる限りシンガロングにもつきあったが、正直、英語の歌詞に共感できず、あまりピンと来なかった。
ALL TIME LOWが終わると、プラチナでもけっこう入れ替えがあった。前述したとおり、再び合流したUさんと、じりじり前へ進み、柵前2列目まで来た。
次のバンドはRoyal Blood。バンドを待つ間に、DJが出てきて「どこから来た?」とか色々喋り、スタッフが客席に放水する。ピーカンのときならともかく、空は徐々に灰色に曇ってきていて、生ぬるいミストは気持ち悪いだけだった。
DJが去ったあと、スクリーンにはピーター・バラカンのプロデュースイベントの告知が流れる。いまだに「世も末」発言を修正・謝罪していないのに、フジロックならともかく、なんで2ndヘッドライナーにBABYMETALを抜擢したクリエイティブマンのイベントにイケしゃあしゃあと出られるのだろう?どういう神経をしているんだろう?
美意識を売りにする音楽業界人として筋を通すなら、「BABYMETALをメインに置くような世も末の会社とは仕事しない」と言うべきだろう。それなら尊敬してやるよ。そうしないのは、どうせ日本の音楽業界なんて、全部ショーバイなんだから、本音なんてどうだっていいんだよ、という人間として最低の奴だということなのだろう。もう1年半以上経つが、ぼくはBABYMETALの味方として、ダメな奴はダメだと言い続けるからね。
タモリ倶楽部の「勝ち抜き歌ヘタ合戦」の回に出てきた、ド下手オーケストラ、ポーツマス・シンフォニアによる「ツァラトゥストラはかく語りき」のテーマ曲にのって、UK出身のRoyal Bloodが登場した。
マイク・カー(B)とベン・サッチャー(D)の二人だけのブルース・ロックユニット。
これがぼくには衝撃的に物凄かった。BABYMETALを除けば、ベスト・アクトだと思う。
マイク・カーのベースは、フェンダー・プレシジョンなど、いたって普通の4弦ベース。だが、そこにエフェクターで倍音たっぷりのディストーションをかけ、ベースラインとギターのようなパワーコードのリフを同時に弾くのだ。
しかもマイクのボーカルは美しいハイトーンで、見事にベースの音域帯と重ならないようにしている。
目を閉じて聴いていると、3ピースか4ピースのバンド、例えばBBA(ベック、ボガード、アピス)か、初期Led Zeppelinのように聴こえる。だが、ここにギタリストはいない。
4-3弦でベースランニングしつつ、1-2弦でリフを弾いて歌い、間奏部では12フレットより上で、ガンガンチョーキングしてリードギターを弾くのだ。
エレキギターは普通1弦0.09mmか0.10mmのセットが標準で、ジャズギターやフォークの1弦0.12mmのセットだともうチョーキングがきつい。それなのに、ベースの1弦0.45というぶっとい弦をいとも簡単にチョーキングするのだ。その出音は、まるで質の良いヴィンテージレスポールみたいだ。
ベン・サッチャーのドラムスも負けていない。白いゴリラのような体形で、野球帽に薄茶色のサングラスをかけ、人を食ったようなニヤニヤ顔で、超パワフルな後ノリのドラミングをする。それが、マイク・カーのベース演奏と合わさると、まるで、歌っているように聴こえるのだ。こんなメロディックなドラミングは生まれて初めて聴いた。時折スクリーンにアップになるベン・サッチャーの指には、痛々しいほどのバンテージがまかれている。物凄い練習量なのだろう。
マイク・カーがメンバー紹介をすると、ベンはドラムセットを離れ、ジンと思しき透明な液体を時折口に運びつつ、ニヤニヤ顔のままステージマイクに近づき、予想を裏切るカン高い声で「コンニチワ」。
安田大サーカスのクロちゃんか、お前は。観客は大爆笑の渦に包まれる。
そのままステージを降り、観客席の中へ。この予測不能さはアブドーラ・ザ・ブッチャーに匹敵する。
ステージに残されたマイクは、一人で、文字通り孤高の超絶ソロを繰り広げている。ベンはニコニコ顔の観客たちと交歓し、その様子をカメラが大写しにする。その間もマイクのアヴァンギャルドなソロは続く。やがて、ステージに戻り、ドラムの前に座ったベンが一発叩いた瞬間、超絶ソロに命が吹き込まれ、ノリノリの楽曲となり、3万人の観客が笑顔でヘドバンし、踊り狂う大グルーヴ大会となる。
かと思えば、マイクがMEL9のようなシンセエフェクターを使って、イギリス人らしいリリカルなオーケストレーションを聴かせ、そこに、またしてもステージ上をうろうろしていたベンのドラムが入って、壮大なプログレ楽曲になったりもする。
マイクは、しまいには田園コロシアムのジェフ・ベックみたいに左手一本でリフとベースラインを同時に弾きつつ、右手でベンのドラムセットのシンバルを叩く。それが、ハードロックバンドの奏でる熱狂のロックンロールになってしまうのだ。こんなバンド、というかデュオ、見たことない!
フォーマットは、伝統のUKブルース/ハードロック。4つ打ちのEDM風、あるいは今風のポップ・ロックのドンツクドンツクなど影も形もない。すべて超重量級の裏拍。これぞロックの原点という武骨さだ。
明るく、楽しく、ポジティブで、ノリがいいだけがロックじゃないんだ。
Royal Bloodは、普段は内向的でおしゃべりが苦手な、ただし、楽器を与えておけば、食うことも寝ることも忘れて弾き続ける男たちが奏でる魂の表現、荒々しさと予測不能な危うさに満ち、結果、みんなを大喝采させてしまう、ぼくが愛してやまないロックそのものだった。
マイクスタンドにベースをぶらさげて去るという斬新な仕方で、Roal Bloodは退場していった。
いやあ、いいものを見せてもらいました。
セットリストは以下の通り。
1.Where are you now
2.Lights out
3.Come on over
4.I only lie when I love you
5.Little Monster
6.Hook, Line & Sinker
7.Figure it out
8.Ten Tonne Skeleton
9.Out of the Black
Royal Bloodのあと、またしても若干の入れ替えがある。UKロック魂を見せつけられてお腹いっぱいになり、日本人の有名バンドなどどうでもよくなってしまった観客がいたのだろう。サマソニ、健全である。
次のバンドは、メイト的に言えば1月のガンズ・アンド・ローゼズ日本公演@SSA の前座として、BABYMETALの出ない初日に抜擢されたMan With A Mission(MWAM)。
オオカミの頭を被った、ある意味「色物」、ソニーのCMにも出ている日本を代表するメジャーバンドである。
ステージの前面にはオオカミの口を模した、上下に別れた垂れ幕が設置されていく。牙の部分には空気を入れ立体となる。オオカミの口の中でMWAMが演奏するという演出。ステージの前だから、バックドロップじゃなくてフロントドロップか。
またしてもスクリーンには告知するバラカンが出てくるが、もう無視。
定刻16:50。両サイドのスクリーンでムービーが始まる。外人の導師や若者、夫婦、子どもたちが映り、Man With A Missionのヒーローぶりを称える。さすがソニーミュージック。ウェルメイド・ギミックとしてのクオリティは高い。
ムービーの終わり、狼の頭を被ったメンバーが登場すると観客席は大歓声に包まれる。
前身バンド時代はいざ知らず、狼の被り物をしたEggmanのコンセプト・バンドとしてデビューしたのは2010年だから、芸人風に言えば、実はさくら学院重音部BABYMETALと同期(^^♪である。
「設定」としては、エレクトリック・レディランドという世界で、ギタリストでもあった天才生物学者ジミー・ヘンドリックスによって生み出された超人的な肉体と頭脳を持つ生命体で、ヒトラーやヨシフ・スターリンなど、歴史上たびたび悪用されたために南極の氷に封じ込められていたのが、2010年、地球温暖化によって融け出し、“復活”したということになっている。
ギミックも“見世物”としてのロックバンドの常とう手段で、KISS、アリス・クーパー、マリリンマンソン、Slipknot、わが聖飢魔Ⅱなど、枚挙にいとまがない。話題作りのためのおふざけ色物バンドだと思っていると、演奏は完璧で、誘惑的でカッコいい歌詞や、そこまでして表現するアーティスト魂に、一般常識人は驚くと同時にファンになってしまうという仕掛けになっている。
ぼくは、HR/メタル派だから、悪ガキが下手くそな演奏で、生半可なサヨク的主張を叫んでいるだけのパンクや、暗いくらーい情念のガレージロックよりも、何重にも屈折した結果思い切ったギミックバンドの方が好きだ。
MWAMの音楽性は、DJがいるから、ミクスチャー、ニューメタル、ポップロック、メロコアなどといわれるが、例によってご都合主義的な定義であり、狼のギミックをまとった、キャッチ―でノリのいいJapanese Wolf Bandというだけでよい。
実際問題として、狼の被り物は、ボーカルのTokyo Tanaka、G&VのJean-Ken Johnny、ベースのKamikaze Boyまでは、大きく開けた口から喉までがぱっくりと開いて、人間としての顔が見えるから、多少重くて暑いだろうが、楽器演奏に支障はない。
だが、ドラムスのSpear RibとDJのSanta Monicaは、喉の部分まで毛皮で覆われており、一見どこにも穴がない。どうやって楽器を見ているのか。はっきりと演奏上問題ないと思われるのは、白塗りのお面をかぶったサポートギタリスト、E.D.Vedderだけだ。
数々のライブ、SSAでも証明済みだが、楽曲は4つ打ち、裏拍織り交ぜて、全編ヘドバン、ジャンプ、モッシュ可能な熱い曲ばかり。
客席へのステージダイブも敢行!
BABYMETALやOne Ok Rock同様、海外に通用する“日本代表”であり、メインステージにふさわしい。がうがう。
セットリストは以下の通り。
1.detabase
2.Hey Now
3.Take what U want
4.Emotions
5.Get off my way
6.Dog Days
7.Dead End in Tokyo
8.Raise your Flag
9.Fly away
8.9.はMWAMのアンセムであり、ライブの定番。「♪Fly away」「♪イェーイイェオ!」のシンガロングは、スタジアムを埋め尽くした観客全員が唱和し、大熱狂となった。
MWAMの終演後、アリーナ後方では入れ替えがあったようだが、プラチナ前列から移動する客は皆無。むしろ圧縮が始まる。
ぼくとUさんはプラチナエリアの柵前にぎゅうぎゅう状態で、水着のねーちゃんによる放水だの、またしてもバラカンの告知だのを耐え、今か今かとBABYMETALを待った。
18:10。
ようやく丸一日かけて「…フードコートの片隅で、狐が夜空に弧を描いた夏。」から始まる「紙芝居」がスタートした。
ここから先は、「サマソニ参戦記(1)」へ続くわけだが、朝のチェスター・ベニントン(リンキンパーク)追悼モニュメントに始まり、アイドル×ラウドロックで勝負するPasscodeのガッツ、日本のバンドとして高校時代からサマソニで育ってきたTOTAL FATの思い、フードコート脇のステージで懸命に踊るアイドルたちの姿、Royal Bloodの楽器アドリブというUKロックの原点、ギミックを武器として戦ってきたMWAMなどを見てきた結果、そのすべてを兼ね備え、そのすべてをのり越えて、2017年夏、BABYMETAL はMarine Stageに立ったのだと深く実感したことをお分かりいただけると思う。
そして、「CMIYC」のブレイクで、SU-が日本語で「ついに、ここまで来ました!」と叫んだ瞬間、ぼくの視界が涙でにじんでしまったということも。
圧倒的なBABYMETALのステージで恍惚状態となったぼくは、多くのメイトさんに続いて場外に出た。体は限界で、Foo Fightersを見るなら、座って見たいと思ったのである。しかし、激しいモッシュとダメジャンプで、いつのまにかプラチナのリストバンドは取れてしまい、意味のないR側と書かれたオレンジ色のリボンだけが残っていた。これでは、シート席に再入場できないかもしれない。ベビメタの余韻が残っているうちに早く書きたい。
で、帰る前に夕食を摂ってしまおうと思い、球場外のベンチで冷やしおろしうどんを啜っていたら、いつのまにかプラチナエリアではぐれてしまったUさんが隣に座った。偶然にも三度目の邂逅。きっとキツネ様による運命の赤い糸で結ばれていたのだろう。
「やっぱり、ファーストの曲はいいっすね」「ベビメタはアイドルですよ」「最初は嫌いだったけど、今はド・キ・ド・キ☆モーニングが大好きになってしまいました。」等々の名言が次々に飛び出した。
そうですね。あの「紙芝居」を見せられたあと、「BMD」の次が「ド・キ・ド・キ☆モーニング」だったら、ぼくは、いやおそらく古参メイトさんの多くが号泣したと思います。
もう有休を使い果たしてしまったので、今晩中に名古屋へ帰り、明日から仕事だというUさんとバス停で別れ、ぼくも電車に乗って家に帰った。シャワーを浴びて、午前0時にブログを書き終わり、木偶のように眠った。
不思議なことに、RIJといい、サマソニといい、あれだけ酷使したのに、フェス明けは体がきつくない。ダラダラとTVばーっかり見ている休日より、よほどリフレッシュできるのだ。きっと心にパンパンに空気が入るからだろう。
(この項、終わり)