ロックフェスの功罪 | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日8月16日は  、2014年、サマソニ2014@幕張メッセMountain Stageに出演し、2015年には、サマソニ2015@大阪舞州特設会場Mountain Stageに出演した日DEATH。

 

今週土日はサマーソニック!!!

BABYMETALの出番は、19日大阪・舞洲特設会場ではOcean Stage、20日幕張ではZOZOマリンスタジアムのMarine Stage。いずれも堂々たるメインステージで、大トリFoo Fightersの一つ前、18:10からのセカンドヘッドライナーの扱いである。

8月9日に公開された三人が英語でしゃべるサマソニに向けたファンメッセージはこちら。

https://www.youtube.com/watch?v=ccQPfBOkoEI&index=20&list=PL11q0S-e-y3221DKuM7v2D3osxsaNQO8v

ぼくの聞き取りは以下の通り。

ALL:Hi! We are BABYMETAL!

SU-:We’re so happy to be able to perform at Summer Sonic again this year!

YUI:It’s an incredible feeling to know that this is our 6 years at Summer Sonic.

MOA:We saw METALLICA performing at Marine stage a few years ago and to perform on the same stage is honor.

SU-:We have always had blast each year and we can’t wait for perform again this year!

ALL:Looking for to see everyone there! See You!

SU-の発音、抑揚、表現力はアメリカン。LとかP、Bの発音を完全に身に着けた。YUIは日本語っぽいアクセントを残したアルカイックな表情と低い声でぐっとオトナっぽく見える。ちょっと声が小さいがCの音をちゃんと発音している。MOAはきれいな発音で、言い終わった後の表情もコケティッシュ。アンパンマンはYUIからMOAにトレードされた模様。内外からのコメントは250を超えている。

 

思えば2012年8月19日、史上最年少で出演した幕張は、Side Show Messeというフードコート脇のステージで、ダイノジ、ニッチェ、阿佐ヶ谷姉妹などと同じ「色物」扱いで、前日の同じステージにはブレイク前のアキラ100%も出演していた。

MOAによると、BABYMETAL出演時、お客さんが後ろの方でご飯を食べていたのが見えたそうで、ライブ終了後、三人はRainbow Stageのももクロを見学。中学1年生だったMOAは夏休みの作文に「サマーソニックに出演しました」と書いたという。

2013年(8月10日幕張-11日舞洲)は、SU-のさくら学院卒業後、BABYMETALの継続が決まり、神バンドを帯同した“五月革命”での修行、METROCK、北海道いわみざわ公園のJoin Alive、株主総会ライブ、さらに骨バンドのLegend ”1999 YUIMETAL & MOAMETAL聖誕祭”を経て臨んだ。

初日の舞台は、前年、ももクロを見学した1万人収容のRainbow Stage。

WOWOWの映像では、父兄やアイドルファンとロックファンが入り乱れる会場に、METALLICAのアルバムの“オマージュ”である「…Justice for BABYMETAL」の紙芝居が映り、「諸君、首の準備はできているか。リンキンパークはこっちじゃないぞ」という挑発的なナレーションが流れる中、「BABYMETAL DEATH」が始まる。

「ヘドバンギャー!!!」の「ヘドバン!ヘドバン!」のところで、今から見るとまだあどけなさを残したYUIとMOAがスモークのホースをもって暴れまわり、観客を熱狂のルツボに叩き落としていく様が衝撃的だった。

このライブによって、「BABYMETALはメタルバンドである」という評価が定着し、秋のLoudpark13につながっていく。

2014年(8月16日幕張-17日舞洲)は、さらにワンランク上がって、Mountain Stage。

サマソニではセカンドステージに当たり、収容は約2万人。アルバム「BABYMETAL」のリリース、日本武道館2日間を経て、初の欧米ツアーで6万人のメタルヘッドを熱狂させたソニスフィアの奇跡を起こし、Lady GAGAの前座を行い、Heavy Montreal(カナダ・モントリオール)に出た後の凱旋ライブだった。

さくら学院時代には最重要の夏フェスといえばTIFだったのが、さくら学院最上級生だったYUI、MOAが出られなかったこの年から、TIFに代わって、サマソニが最重要の夏フェスとなった。

2015年(8月15日幕張-16日舞洲)もMountain Stage。

二度目のワールドツアーは、メキシコシティ、カナダ、アメリカ中西部から、スイス、オーストリア、イタリア、フランス、ドイツ、イギリス、日本の合計10か国を回る過酷な日程だった。

この年、BABYMETALは海外のロックフェスを数多く経験した。Rock on the Range(米オハイオ州・コロンバス)、Rockavaria(ドイツ・ミュンヘン)、Rock im Revier(ドイツ・ゲルゼンキルヒェン)、Rock in Viennna(オーストリア・ウイーン)、Download(イギリス、Dragon Forceと共演)、Reading & Leeds(イギリス)などである。

日本でもサマソニのほかにMETROCK、OZZ FEST in JAPAN 2015(幕張メッセ)、Countdown Japan15/16にも出演している。新春狐祭り(SSA)、巨大天下一メタル武道会(幕張)、Final Chapter of Trilogy(横アリ2日間)や黒ミサ・赤ミサ、World Tour in Japan(各地のZepp)などの単独公演はまた別だ。すさまじい巡業スケジュールである。

2016年のサマソニ出演は、8月21日、大阪・舞洲特設会場のSonic Stage、府民共済SUPERアリーナだった。Sonic Stageは幕張ではサードステージで、Rainbow Stageと同様1万人の収容人数だが、舞洲では収容約7000人の屋内会場だった。

この年、BABYMETALはビルボード200のトップ40に輝いた「Metal Resistance」を引っ提げ、イギリス・ウェンブリーアリーナを皮切りに、三度目のワールドツアーを実施。

海外フェスとしては、Carolina Rebellion(米ノースカロライナ州シャーロット)、Northern Invasion(米ウィスコンシン州サマーセット)、Rock in Vienna(オーストリア・ウイーン)、Fortarock(オランダ・ナイメーヘン)、Download Festival(イギリス・ドニントン、フランス・パリ)、Chicago Open Air(米イリノイ州シカゴ)に出演し、国内の四大夏フェスを、フジロック、Rock in Japan、Rising Sun とこなし、最後に迎えたのがサマソニだった。

凱旋ライブとなったフジロックのWhite Stage(1万人)で観客が殺到したため、屋内アリーナのサマソニ大阪では観客が入りきらず、入場制限が危惧されたが、結果的に入場制限がかかることはなく、猛暑を逃れることができ、2階席もある見やすいステージで、根性を据えて見に行ったメイトさんはラッキーだった。東京ドームでの予行演習なのか、“ウェーブ”が行われるなど盛り上がったライブになった。

そして今年2017年は、1月にMETALLICA@ソウル、Guns and Roses@国内4会場、4月にレッチリ@アメリカ東海岸~フロリダ、6月にハリウッド単独&KORN@アメリカ西海岸と、大物バンドとのアメリカ巡業ツアーをこなし、5大キツネ祭り@東京&名古屋を経てのサマソニである。YUIのいうように、BABYMETALは、6年連続でサマソニに出演し続けている唯一のアイドル&和製メタルバンドということになる。

Marine Stageの収容人員は3万5000人。なかなか当たらない小箱のライブより、確実に生のBABYMETALを見ることができる。東京ドーム以来という方も多いだろう。

 

サマソニ、フジロック、RIJのような大規模ロックフェスは、大小いくつものステージに分かれ、ヘッドライナー級から、中堅バンド、ほとんど知らない若手のバンドや野心的なアイドルグループまで、多くのアーティストが、タイムテーブルに従ってライブを行う。

出演時間は30分~50分、5曲~8曲で、単独ライブよりだいぶ短いが、1日券のチケットで複数のバンドを見ることができるのがメリット。

ただし、見たいバンドの出演時間帯が重なってしまった場合には、どちらか選ばなければならないし、ステージからステージへ1日がかりで広い会場内を歩き回ると相当へばる。

お目当てのバンドを最前列で見たい場合には、少なくとも出番の2つくらい前からそのステージに陣取らなくてはならないし、名物のフェス飯を食うにも長蛇の列に並ばなければならない。

結局、「あれも見たいこれも見たい」という我欲を抑え、見るバンドを絞って時間的余裕を持たせ、体力を温存するスケジュールを組むのがフェス観覧のコツということになる。

それでも、行きはまだよいが、帰りは足腰がガタガタになり、顔は真っ赤に日焼けし、土煙と絶叫で喉はヒリつき、物販とフェス飯、交通費で大散財という結果になる。

考えようによっては、そんなにまでしてフェスなど行かずとも、家でWOWOWを見た方がよいという結論にもなりがちである。

だがしかし。

ロックフェスには、生の音楽がある。生演奏という意味だけではなく、ライブは文字通り、演者と観客の相互作用で作られる生き物だから、ステージ上から撮影される俯瞰映像を見る第三者ではなく、ライブを作る主人公の一人になれるということだ。

数万人の大観衆の一人として、ミュージシャンと時間を共有し、「今」「ここ」で起こっている音楽という現象に身を委ねる…。これが野外ロックフェスのだいご味である。

BABYMETALは結成当初から、単独公演とフェスのライブ2本立てで育ってきた。

単独公演はほぼ全員お目当てのファンだから、客席は基本的に「設定」のままに熱狂してくれる。しかし、他のバンド目当ての客や初見の客も多いフェスでは、「設定」を受け入れてくれるかどうかは、一瞬の勝負だ。

「設定」とは、前にも書いたが、アーティストとしてのアイデンティティのことで、アーティスト自身がその「設定」を生ききれていなければ、“やらされてる感”にいたたまれなくなるし、「設定」が時代状況とズレてくるとウケる観客の年齢層が限定されてしまったりもする。フェスでは不思議なくらい残酷に、観客は一瞬でアーティストの「設定」のリアル加減を見極めてしまうのだ。

例えば、社会批判的な歌詞を叫び、観客を煽るパンク/ファンクバンドでも、演奏や歌のピッチが不安定だと、観客は乗り切れない。ベテランボーカリストを擁するロックバンドでも、顔のしわがスクリーンにアップになり、ビブラートを利かせすぎて演歌風に聴こえた瞬間にオーラが消し飛び、観客は醒めてしまう。

BABYMETALは幼いころからアウェーのフェスを数多く体験し、いまや圧倒的に強い世界一のライブバンドになった。それは、その「設定」にリアリティがあり、観客がいやおうなしに認めざるを得なかったからだ。

神バンドの一部の隙も無い演奏力。まだ10代なのに特権的といえるほど澄み切ったSU-の歌唱力やステージ度胸。YUI、MOAの激しいダンスとKawaiiヴィジュアルとの想像を絶するギャップ。「アイドル×メタル」というコンセプトの先進性、へんてこなキツネ様への崇拝と、サブカルに淵源を持つ、荒唐無稽な紙芝居。メタル史に“オマージュ”を捧げた高度なアレンジの楽曲。

それに加えてここ数年は、海外の大物と同じステージに立つ外タレ感という、幾重にもありえない「設定」がBABYMETALの訴求力になっていた。三人は道なき道を行くというリアルな「設定」を生き切っており、その「設定」は、陳腐化したテレビ「アイドル」への反乱、日本文化の世界的評価という時代状況にフィットしていた。

2017年、BABYMETALはほとんどテレビに露出しなくなり、1年ぶりのファンに向けた動画配信ではついに日本語をしゃべらなくなった。YouTubeについたコメントを読むと、海外ファンの英語コメントも多いが、さくら学院時代を知る日本人ファンからは「ついに日本語でしゃべることも禁じられたのか」という意見も多い。 

この夏、今年初めての大規模ロックフェスとなるサマソニで、この「設定」がまだ有効なのかそれとも微妙にズレてきているのか。それを見極めることは結構重要かもしれない。